商用車メーカーは既にテレマティクスサービスを開始している。「いかに効率よくトラックを運行させ、物流につなげるか」を見据えた運行動態管理システムにおける携帯電話の活用が、商用車向けテレマティクスサービスに進化した。
現在は運行動態管理システムに加え、デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー、オートリース用テレマティクスという4つの端末が融合しつつ、商用車向けテレマティクス端末として進化を遂げようとしている。将来的には、2010年のリコール問題で注目を集めているイベントレコーダー(EDR:自動車の制御をつかさどる「ECU」の車速、時間などの動作を記録・読み出せるシステム)との融合も考えられている。
矢野経済研究所は商用車向けテレマティクス端末4品目を調査した。4品目の出荷台数の合計値は、2009年が20万7600台だった。2015年には30万4400台にまで拡大すると予測される(図1)。2008、2009年はリーマンショック以降の不況の影響でマイナス成長だったが、2010年以降は再び上昇する。2009〜2015年までの年平均成長率は106.6%となり、堅調に成長を続けていく見通しだ。
端末名 | 台数(2009年) | 台数(2015年:予測値) | 年平均成長率(2009〜2015年:予測値) |
---|---|---|---|
デジタルタコグラフ | 9万1000台 | 13万9000台 | 107.3% |
運行動態管理システム | 2万2400台 | 3万3300台 | 106.8% |
リース車両用テレマティクス | 6950台 | 1万500台 | 107.1% |
ドライブレコーダー | 8万7250台 | 12万1600台 | 105.7% |
商用車向けテレマティクス市場が堅調に推移する背景には、(1)各種補助金、助成金、(2)通信費の低額化、(3)営業車両の無駄の撤廃――がある。
(1)各種補助金、助成金は、テレマティクスサービスの導入を後押しする。2009年に国連総会の一環として開かれた気候変動首脳会合では、「1990年比で2020年までに25%のCO2排出量削減を目指す」という中期目標の表明があった。この実現に向けて、新たな環境対策アプリケーションとしての役割を持つテレマティクスの導入増を見越した補助金や助成金が設定される可能性がある。
(2)通信費の低額化も、市場成長の要因の1つだ。通信キャリアはビジネスの対象として、自動車用通信市場を有望と考えている。通信キャリアは、パケット単価を下げてでも商用車向けテレマティクスのユーザーを増やす施策を実施している。
(3)営業車両の無駄の撤廃も重要だ。リーマンショックにより、コスト削減は企業の大命題となった。その一環として、営業車両の無駄をなくすことが求められた。リース車両を適正な台数にする運行動態管理システムへのニーズが高まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.