エコドライブで急成長する商用車向けテレマティクス市場アナリストの視点(3/3 ページ)

» 2010年08月11日 08時00分 公開
[森健一郎(矢野経済研究所),ITmedia]
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2025年に1000億円市場 商用車向けテレマティクスの可能性

 図2は、2016年から2030年までの商用車向けテレマティクス端末市場の規模の推移を予測したものだ。

image 図2:商用車向けテレマティクス端末 2016〜2030年の市場推移予測(国内、台数ベース)。テレマティクス端末はデジタルタコグラフ、運行動態管理システム、リース車両用テレマティクス、ドライブレコーダーの合計値。これらの端末は今後融合していく可能性が高いため、合計して予測値を算出した(矢野経済研究所推計)

 トラック、バス、タクシー、オートリース、そのほかの白ナンバー商用車を含めた商用車向けテレマティクスの潜在的な対象は、国内商用車保有台数の2000万台と推計する。2030年までの市場予測は、諸条件によって下記のケース1、2のように異なる結果が予測される。

ケース1 行政施策、イベントレコーダー標準搭載がある場合

 商用車向けテレマティクスサービスは、最大で商用車両全体の50%に搭載されると予測される。最大で1000万台(累積台数)の国内商用車にテレマティクス機器が搭載される計算だ。

 2012年には電気自動車(EV)市場が日本で動き出すとみられている。2020年のCO2排出量25%削減目標に向けて、商用車のエネルギーマネジメント(スマートハウス、スマートグリッド)計画も動き出すだろう。

 エネルギーマネジメントは2012年に実施され、2015年から本格的に稼働する見通しである。実現には、車両の電力量データを車載端末からセンターサーバに吸い上げることが必要だ。週末だけ動く乗用車よりも日夜稼働し続ける商用車のデータが重要になってくる。

 2015年を機に商用車向けテレマティクスサービスが大きく拡大する可能性が高い。図2において商用車向けテレマティクス端末の市場が2015年から急成長を遂げ、2020年に80万台に到達しているのはそのためである。主要企業は2020年に同サービスの導入をほぼ終えると推察でき、その後はゆるやかに成長する見通しだ。

 テレマティクス端末の1サイクルは約10年だ。ここから成長のピークは商用車テレマティクス端末稼働台数(1000万台)の10分の1である100万台と考えられる。2025年頃に100万台に到達し、その後は更新需要として単年度100万台が出荷され続ける見通しだ(2025〜30年予測)。

 端末の単価を10万円とした場合、金額ベースでは単年度で1000億円市場(100万台×10万円=1000億円)になる。だが、ASPとしてテレマティクスサービスを提供するベンダーも多く、想定よりも低い数値になることも考えられる。

 イベントレコーダーの標準搭載化も重要なポイントである。イベントレコーダーには、ソフトウェアとして運行動態管理システムが組み込まれる可能性が高く、「イベントレコーダー=商用車向けテレマティクス端末」になるかもしれない。

ケース2 行政施策、イベントレコーダー標準搭載がない場合

 現状の施策のまま、今後も推移する場合である。2020年ごろから市場の成長は落ち着き、ほぼ横ばいの微増となる見通しだ。イベントレコーダーが商用車に搭載されない場合を仮定して、市場規模を予測している。


 商用車向けテレマティクス端末の市場は、実際はケース1、2の中間点で推移すると考えられる。だが今後、国家施策としてエネルギーマネジメントの展開が進むことは間違いない。商用車両の電力量データを車載端末からセンターサーバに吸い上げるためには、国が利用者の通信料金を下げ、ASP事業者を育成する施策をもって動き出すものと考えられる。

調査要綱

矢野経済研究所は、1.調査対象:対象製品)商用車向けテレマティクス(デジタルタコグラフ、運行動態管理システム、リース車両用テレマティクス、ドライブレコーダ)、乗用車向けテレマティクス、歩行者向けテレマティクス 対象企業)自動車メーカー/テレマティクスサービスベンダー/通信関連企業/IT関連企業60社、2.調査期間:2010年1月から2010年6月、3.調査方法:当社専門研究員による直接面接、電話、電子メールなどによるヒアリングを併用――によって国内テレマティクス市場を調査した。


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