OracleはJavaFXをどう扱うのか

Oracleが今後推進していくRIA技術「JavaFX」は、ツールの整備が進んだことで、ようやく実用フェーズに入ったといえる。日本ではしっかりと語られる機会がほとんどなかったJavaFXについて、「Oracle Sun Technology Updates」で情報収集するのは賢明かもしれない。

» 2010年08月13日 12時19分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 RIA――リッチインターネットアプリケーションという言葉が使われるようになってかなりの時間が過ぎた。AdobeやMicrosoftが先行するRIAの市場だが、第3勢力ともいえる存在が猛烈な追い上げを見せようとしている。それがOracleの「JavaFX」だ。

 JavaFXは2007年のJavaOneでSun Microsystemsが発表した一種のRIA技術。Java VM(仮想マシン)向けにコンパイルするスクリプト言語「JavaFX Script」を軸に、Javaプラットフォームが持つ機能を生かしながらRIAを開発できる点が特徴。Javaの実行環境が用意されていれば、さまざまなスクリーン――PCやモバイル、TVなど――で動作するため、Javaの精神ともいえるプラットフォーム非依存性、つまり、“Write Once, Run Anywhere”をモダンにしたものだということもできる。

 2008年12月には、Webブラウザ/デスクトップをターゲットとしたJavaFX 1.0がリリースされ、その後、バージョンが上がるにつれ、モバイルやテレビのランタイム環境が追加されるなど、ビジョンとしては明快だが、競合となるAdobe Flash PlatformやSilverlight、あるいはAjaxなどと比較すると、ブレイクするまでの助走距離が長い印象があるJavaFX。加えて、SunがOracleに買収されるという出来事もあり、その動向にやきもきしていた方も多いと思われる。

日本オラクル Java Embedded Global Business Unit セールスコンサルタントの草薙昭彦氏

 「(Sunとの統合を果たしたOracleが)JavaFXに対する最新の取り組みや、そのエコシステムがしっかりと語られる機会はこれが初めて」と話すのは、日本オラクルの草薙昭彦氏。同氏が話す機会とは、日本オラクルが8月19日に開催するテクノロジーイベント「Oracle Sun Technology Updates」を指す。同イベントの本丸は、もちろんJavaとSolarisの情報がアップデートされる点にあるが、JavaFXについても最新の動向とOracleが今後どのように取り組んでいくかが草薙氏から紹介される予定だ。

 「RIAのエコシステム全体でみれば、ほかのRIAプラットフォームと互角に戦うまでにはなっていなかった」と草薙氏。問題となっていたのは、ツールの整備、特にデザイナー向けのツールの整備が遅れていた点だ。

 RIAの開発で重要なのは、シンプルな開発言語とグラフィカルなデザインツールの存在、言い換えれば、デベロッパーとデザイナーのワークフローをいかに調和させるかだ。JavaFXはプラットフォームとしては有望だが、ツールセットの整備が遅れていた点はJavaFXの輝きを鈍らせていた。

 しかし、ここに来て状況が変化しつつある。Sunを買収したOracleは、Java、あるいはJavaFXのコミットを強く打ち出している。JavaFXについては、2つのツールの提供で、JavaFXによるRIA開発のワークフローを完成させたい考えだ。そのツールが、「JavaFX Authoring Tool」と「JavaFX Composer」だと草薙氏は説明する。

 JavaFX Authoring Toolは、2009年のJavaOneでプレビューが披露されていたオーサリングツールで、AdobeでいうFlash Professionalに相当するもの。一方、JavaFX Composerは、JavaFX 1.3から新たにSDKの一部として加わったビジュアル開発ツールで、JavaFXコンポーネントをデザインエリアに配置していくことでフォームベースのJavaFXアプリケーションの開発を行えるようにするもの。JavaFX Authoring Toolはまだ正式リリースされていないが、これらがJavaFXの利用を促進する可能性は高い。

バンクーバー冬季オリンピックのWebサイトに採用されたJavaFX。草薙氏は「JavaFXのユースケースとしては、Javaの資産を生かすという意味でエンタープライズがやはり鍵」としている

 また、アセットとしてのアートワークについては「JavaFX Production Suite」を用意している。JavaFX Production Suiteは、IllustratorやPhotoshopで作成したアートワーク、あるいはSVGファイルをJavaFX Scriptで記述されたJavaFXフォーマットに保存/変換するツールセットだ。

 「JavaFXの強みは、既存のJavaの資産を生かせることにある」と草薙氏。エンタープライズ領域でのユースケースの登場が注目されるが、バンクーバー冬季オリンピックのWebサイトに採用されるなど、事例も登場しつつある。1つのソースコードベース、1つのツールセットでさまざまなスクリーンに対応できる環境が整備されたことで、この動きが加速するだろう。

 冒頭に紹介したOracle Sun Technology Updatesは、「JavaとSolarisの今を1日で理解できる」としており、JavaFXについても、より深い話が草薙氏から紹介される予定だ。RIAにおける第3勢力であるJavaFXについて、そろそろ情報収集を始める価値が出てきたようだ。

関連キーワード

JavaFX | Oracle(オラクル) | RIA | JavaOne | NetBeans


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ