企業は「忍耐力」を持ってビジネス分析に取り組めIBM Information On Demand 2010

米IBMの年次カンファレンス「Information On Demand 2010」の2日目に行われたゼネラルセッションでは、ユーザー企業が自社の取り組みや情報活用の勘所を語った。

» 2010年10月27日 11時54分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米IBMはデータ関連製品ブランドの年次カンファレンス「Information On Demand 2010」をネバダ州ラスベガスで開催している。2日目となる10月26日(米国時間)に行われたゼネラルセッションでは、ユーザー企業が自社の取り組みや情報活用の勘所を語った。

 パネルディスカッション形式で行われた同セッションには、家電量販店の最大手である米Best Buyのアナリティクス コンシューマー インサイト部門でシニアディレクターを務めるスコット・フリーゼン氏、米Gwinnett County Public SchoolsのCIO(最高情報責任者)、スコット・フトレル氏、自動車保険会社の米NationwideでCTOを務めるスリニバス・コーシック氏、Nestleでグローバル ビジネス エクセレンスのバイスプレジデントであるグレッグ・クリストファー氏が登壇。モデレーターは米IBMのグローバルビジネスサービス部門 シニアバイスプレジデントのフランク・カーン氏が務めた。

左からフランク・カーン氏(IBM)、スコット・フリーゼン氏(Best Buy)、スコット・フトレル氏(Gwinnett County Public Schools)、スリニバス・コーシック氏(Nationwide)、グレッグ・クリストファー氏(Nestle) 左からフランク・カーン氏(IBM)、スコット・フリーゼン氏(Best Buy)、スコット・フトレル氏(Gwinnett County Public Schools)、スリニバス・コーシック氏(Nationwide)、グレッグ・クリストファー氏(Nestle)

時間をかけて啓蒙

 情報にかかわるビジネスの現状について、フリーゼン氏は「情報が足りない時代から情報が多過ぎる時代へとパラダイムシフトが起きている。現在、多くの企業ではさまざまな情報にアクセスできるようになったものの、それらを使いこなせるかが問題になっている」と述べた。

 そこで重要になるのが、企業に散在する情報を統制を効かせて管理し、効果的な活用をしていくかだ。ただし、これらが機能していくためには社員が情報の価値やビジネス分析の重要性を理解しなければならない。フリーゼン氏は「時間をかけて他者、そして自らをも啓蒙する必要がある」と話す。Best Buyでは、顧客と直に接する店舗社員がビジネス拡大の鍵を握るため、彼らを啓蒙するとともに、「消費者が何を望んでいるか」といった情報を与えて顧客満足度(CS)を上げる取り組みをしている。

 Nationwideのコーシック氏は、企業で情報活用の土壌を構築するために欠かせないのは「忍耐力」だと強調する。例えば、売り上げが低迷する企業であればビジネス改善に向けて必死に環境を変えようと努力するが、成長企業だとこれまでの成功体験に縛られてしまい、わずかな変化でも嫌う傾向にある。「今は収益が伸びていても、いずれは壁にぶち当たる。そうならないためにも、忍耐力を持って情報を日々活用する土壌を作り上げていくべきだ」とコーシック氏は話す。同社では、最前線である営業担当者に情報を使ってもらうような環境を整えたことでビジネスに一定の効果が出たことで、情報やデータの重要性が社内に浸透し、今ではCMO(最高マーケティング責任者)やCFO(最高財務責任者)がビジネスアナリティクス(BA)ツールを活用しているという。

「企業のリーダーが意思決定する上で情報は欠くことのできないもの。ものすごいスピードでビジネス環境が変化する今、スプレッドシートを土台にした情報活用は足かせになってしまう」(コーシック氏)

情報を活用して行動に移せ

 Nestleでも情報活用やデータ分析の重要度が高まっているという。特にグローバルで展開する同社では、BAツールを導入したことで「世界中のマーケットや拠点の情報が見えるようになった」とクリストファー氏はメリットを強調する。同社でもCFOの意思決定に大きく関与するものだとしている。また、情報そのもののあり方について、Gwinnett County Public Schoolsのフトレル氏は「(意思決定者などが)望むときに最適なものが瞬時に出てこなくてはならない」と情報の価値基準を示した。

 正確で質の高い情報でなければ、企業は正しい予測や意思決定ができないことは言うまでもない。ただし、情報活用において大切なのは、「将来を予測して終わるのではなく、情報から得られる洞察をいかに行動に転換できるかどうかだ」とカーン氏は繰り返し力を込めた。

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