ユーザー、アナリスト、メディアが認めたIBMとSPSSの統合IBM Information On Demand 2009 Report

米IBMは10月に米SPSSの買収を完了させ、統合を進めている。SPSSの主力技術「予測分析」という新たな情報活用戦略をIBMにもたらす。この統合のシナジー効果について、双方の担当者に話を聞いた。

» 2009年10月28日 15時53分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 米IBMは現地時間の10月25日から、ラスベガスで「IBM Information On Demand 2009」を開催している。同イベントでは、企業内に蓄積したデータを分析し、洞察を加え、未来までを予測するという同社の情報活用戦略「Information On Demand」をアピールしている。

 10月に買収を完了した米SPSSは、IBMにとって「予測分析」という情報活用の手法をもたらす新たなピースとなる。SPSSとの統合効果や戦略について、IBMのソフトウェアグループ インフォメーションマネジメント部門で副社長を務めるディーパック・アドバーニ氏とSPSSのコーポレートディベロップメント部門に属するエリック・ブレスノー副社長に話を聞いた。

―― 買収後の統合はどれだけ進んでいるのか。

エリック・ブレスノー副社長 SPSSのエリック・ブレスノー副社長

ブレスノー 買収が発表されたのが7月28日で、10月2日には買収の手続きが終わった。現在企業の人事や営業活動面などで足並みをそろえており、統合は計画的に進んでいる。今は営業や開発のトレーニングをしている最中で、電話による営業窓口の統合や、SPSSの技術がIBMの製品でどう動くかといった部分を調整している。第4四半期からは営業活動も本格的に始めていく見通しだ。

―― データ分析市場におけるSPSSの強みは何か。

ブレスノー ここ数年間は、独自の統計アルゴリズムの作成やデータマイニング技術に力を入れ、予測分析の手法を企業のビジネスプロセスに導入するビジネスを進めている。投資対効果が高いサービスと顧客には評判だ。IBMは5年にわたり情報に基づく変革を進めており、業界ごとに情報活用のテンプレートを整備する「インフォメーション・アジェンダ」と呼ぶサービスに投資していたが、ここには予測分析という要素が欠けていた。SPSSの技術がそのままIBMの強みになると考えている。

―― 情報分析ソフトウェアである「Cognos」と「SPSS」の違い、サービスや製品群のすみ分けはどうなるのか。

ディーパック・IBMのアドバーニ ディーパック・アドバーニ副社長

アドバーニ Cognosのソフトウェアはビジネスインテリジェンスとパフォーマンス(業績)管理が柱の機能で、企業のデータから過去に何が起きたかをダッシュボードで視覚的に分析し、シナリオを描ける。根本的な違いは、SPSSのソフトウェアはモデル化による予測と決断ができること。この能力をCognosに組み込み、顧客の意志決定を支援する。

 SPSSの技術はCognosが提供するサービスのポートフォリオを強化するものであり、今回の買収は顧客、アナリスト、メディアからも歓迎された。第4四半期以降ではSPSSの技術を組み込んだIBMの製品やサービスを顧客に提案できるようにしていきたい。

―― 予測分析市場の大きさはどれくらいか。

ブレスノー 社内の専門チームで同市場を調査したところ、予測分析関連のアプリケーションやソリューションを含めると2009年の同市場規模は38億円に達する。世界だけでなく日本市場にも期待している。日本(におけるSPSSの動向)は、大学や学術機関との連携がうまい。SPSS製品の日本での市場占有率はほかの国よりも高いのが特徴であり、注目の市場だ。

―― IBMとSPSSの統合はいつをめどに完了するのか。

アドバーニ (人事面などの統合で)これから12カ月はかかる見通しだ。10月2日にIBMとSPSSの買収取引は完結している。経営の観点で言うと、すでにIBMとSPSSは1社として事業をスタートさせている。

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