NRI、オーストラリアの公的研究機関とICT活用において共同研究を推進「ITS」「スマートグリッド」「水供給管理」「農業」に注力

野村総合研究所はオーストラリアの公的研究機関「NICTA」と手を組み、インフラビジネスにおけるICT活用の研究を進める。「ITS(高度道路交通システム)」「スマートグリッド(次世代電力網)」「水供給管理」「農業」の4分野に注力する。

» 2010年11月24日 17時00分 公開
[唐沢正和,ITmedia]

 野村総合研究所(以下、NRI)は11月22日、オーストラリアの公的研究機関「NICTA」と共同で、都市、産業、社会基盤におけるICTの活用に関する研究と、その研究成果に基づく提言や実用化に向けた活動を実施することで合意したと発表した。

nri01 野村総合研究所 常務執行役員 未来創発センター長の山田澤明氏

 今回の発表にあたり、NRI 常務執行役員 未来創発センター長の山田澤明氏は、「現在、新興国などの経済成長にともない、上下水道や鉄道、電力、空港、港湾などのインフラ需要が世界的に高まっている。こうした市場背景の中、日本では、最先端の技術力や高度運営の実績、また効率的なインフラ整備経験を生かし、インフラ輸出ビジネスを国策として推進している。しかし、その一方で、日本はこれまで国内のインフラ構築・運営に特化してきたことから、海外のインフラ事業展開におけるリーダーが存在せず、知識や経験も不足しているという大きな課題があった」と、日本のインフラ輸出ビジネスの実状を指摘する。

 「当社では、こうした課題を解決するために、インフラビジネス先進国であるオーストラリアと密接なパートナーシップをつくることが重要だと考えた。オーストラリアは、アジアに近い国際志向の強い先進国であり、世界でも早くから民間資金活用およびPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)に取り組んできた経験をもっている。さらに、オーストラリア自身も、今後10年間で7500億豪ドル(60兆円)のインフラ投資を行う計画で、ブロードバンドインフラにも今後8年間で430億豪ドル(3.4兆円)の投資を予定している。日本とオーストラリアとのパートナーシップは、両国のインフラビジネスを補完し、ウィンウィンの関係を築けると判断した」(山田氏)と、オーストラリアとの共同研究に至った背景を説明した。

 また、地球温暖化など世界的課題への対応と、経済・社会の健全な発展を両立させるためには、「スマートシティ」や「スマートグリッド」などのICTの活用が重要であり、とくに、新興国や発展途上国では、インフラ整備の初期段階からICTの活用を踏まえた取り組みが不可欠であることから、オーストラリアにおいてICTの研究で中心的な役割を担っているNICTAとの共同研究を通じて、インフラビジネスにおけるICT活用の研究を進めていくことを決めたという。

nri02 オーストラリア大使館 公使 正宗エリザベス氏

 この発表を受け、オーストラリア大使館 公使の正宗エリザベス氏は、「日本はオーストラリアにとって重要な貿易国。また、グローバル化が進む中で、さまざまな産業において、日本からオーストラリアへの投資も増えており、貿易だけにとどまらず信頼できる関係にある。今回、ICT分野で世界的な競争力をもち、急成長を続けているオーストラリアと、先進技術を持つ日本がパートナーシップを組み、それぞれの強みを生かしながら情報交換できる基盤が実現することで、両国にさらなる相互利益が生まれると確信している」と述べ、NRIとNICTAとの共同研究プロジェクトを積極的に支援していく考えを示した。

nri04 共同研究の具体的な取り組みは、「ITS(高度道路交通システム)」「スマートグリッド(次世代電力網)」「水供給管理」「農業」の4分野におけるICT活用をテーマとする

 共同研究の具体的な取り組みとしては、「ITS(高度道路交通システム)」「スマートグリッド(次世代電力網)」「水供給管理」「農業」の4分野におけるICT活用をテーマに、「オーストラリア国内の特定都市・地域を研究対象とした先進国モデル」および「東南アジアの特定の都市・地域を対象とした新興国・途上国モデル」を検討する。

 そして、この2つのモデルをベースに、NRIではNICTAとともに、対象候補となる都市・地域での実証実験や提言活動を、現地の政府機関に対して行っていく。また、これらの活動を通じて、日豪双方の強みや弱みを具体的に点検し明らかにすることで、両国がパートナーとして補完しあう体制作りに向けた提案を行っていく。

 NRIでは、今回の共同研究を、4月に設立した未来創発センターを中心に進めていく方針で、日本の企業や研究機関などに対して2011年1月から参加に向けた募集を開始する予定。とくに、「ITS」「スマートグリッド」「水供給管理」「農業」の分野におけるICT活用について、オーストラリアおよび東南アジアへのインフラ輸出に関心を持つ企業に呼びかけていく考え。一方、NICTAでは、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)や他のオーストラリアの研究機関、企業の参加を呼びかけていく予定。

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