父型上司と母型上司ITmedia エンタープライズ書評

「ITmedia エンタープライズ書評」第4回。今回はキャリアカウンセラーの資格を持つ編集者が、2011年の上司像を考えるときに役にたつ書籍を3冊ご紹介します。

» 2011年01月01日 11時00分 公開
[鈴木麻紀ITmedia]
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求められる父型上司

 社内失業という言葉をご存じでしょうか? 本人にやる気も能力もあるにも関わらず、企業側の事情で仕事を奪われた若手社員をさす言葉だそうです。「社内失業 企業に捨てられた正社員(双葉社)」は、社内失業中の筆者が同様の状況にある若者たちに話を聞いて書いた本です。

 正直に言うと、本書を最初に読んだときの印象は違和感でした。「仕事を与えてくれない、教えてくれない」「仕事が割り振られないのは、リーマンショックのあおりだ」などの彼らの主張に、「甘えてるんじゃないのか」「うまくいかない理由を、外のせいにするなんて」などと思ってしまったのです。

 そんな折、「SEからコンサルタントになる方法(日本実業出版社)」の筆者である北添裕己氏に、リーダーシップについてお話を伺う機会がありました。その中で氏は、「いまの若い人は仕事を教えてもらったり与えてもらうのを待っていると同年代の仲間は嘆く。でも彼らはそういう風に育てられたのだから、わたしは嘆いたり切り捨てたりせず、引っ張っていきたい。彼らの能力を引き出しきる。それがリーダーなんだ」と静かに語っていました。

 北添氏はその情熱的な仕事の進め方が有名で、ときに「テメエ、コノヤロー!」とメンバーにハッパを掛けることもあったと聞いたことがあります。言葉だけを聞くと鬼上司のイメージを抱いてしまいますが、その裏には怒鳴ってでもメンバーを引っ張っていく父親的な愛情があったのです。

 社内失業中の若者たちは、北添氏のような父親的愛情を欲しているのかもしれない。そう思いながら再度「社内失業」を読んだら、また違う感情が湧いてきました。

母型上司の包容力

 オルタナブロガーの坂本史郎氏は、全社員に毎日報告のメールを送ってもらい、そのすべてにコメントを付けて返信しています。一歩間違えば監視や管理とも受け取られかねない活動ですが、氏の会社ではこれがうまく運用されています。

 メールを受け取ることで社員は、「わたしはあなたを見ていますよ」という社長からのメッセージを受け取り、安心して仕事ができる。この見守り力は母親的愛情に根差したものだとわたしは思います。

 聴く力に注目したのが、オルタナブロガー竹内義晴氏が書いた「『職場がツライ』を変える会話のチカラ(こう書房)」です。会話の中から相手の考えを聞くことの大切さを説いた氏の考えは、まさに母親的と言えましょう。

2011年に求められるのは、父&母混合型?

 昨年わたしは、オルタナブロガー小俣光之氏と共同で「ドジっ娘リーダー奮闘記」を執筆しました。ここに登場する主人公の上司「輩田(やからだ)さん」は、ベースは情熱的に部下を成功に導く父型でありつつ、母型的要素も併せ持つ父&母混合型です。

 彼は常に部下を見守っています。普段は冗談ばかり言っていますが、必要なときには部下の話に耳を傾けたり手を差し伸べたりします。輩田さんのキャクターは、わたしが「こう在りたい」と思う将来の姿でもあります。

 父型でも母型でも混合型でも、根底に必要なのは部下への愛情なのだと改めて思う年の初めです。あけましておめでとうございます。今年もよい年にしましょうね。

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