解決指向のストレージ選び

「ストレージは難解ではない」 ガートナーが解説する3つのキーワード解決指向のストレージ選び(2/3 ページ)

» 2011年02月08日 08時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

押さえておくべき3大キーワード

 では、各キーワードの概要について、順を追って見ていこう。

 まず、1つ目のiSCSIは、ストレージの世界で標準的なSCSIのコマンドやデータをTCP/IPパケットでカプセル化することで、ストレージ製品をIPネットワークへ直接接続することを可能にする技術だ。従来から企業の基幹システムで広く利用されてきたSANストレージは、大容量かつバースト性の高いストレージデータの転送特性を考慮し、IPネットワークとは異なる独自のFC(Fiber Channel)ネットワーク上に構築されてきた。対して、iSCSIストレージは専用ネットワークが不要なため、導入コストを大幅に低減できるメリットがある。

 また、iSCSIストレージであれば、設定も極めて容易と鈴木氏。

「基幹系で多く利用されてきたFC-SANストレージは、構造が複雑なため設定変更をベンダーに依頼する必要があり、完了までに時間を要す。対して、iSCSIストレージは仕組みがシンプルであり、自社で設定変更も可能だ」(鈴木氏)

 NASは、クライアントPCに対してファイル共有サービスを提供するストレージであり、OSを搭載したコントローラとハードディスクから構成されるファイルサービス専用コンピュータといえる。その特徴は何といっても高機能性である。重複排除やシン・プロビジョニングといった機能を豊富に備えている製品が多く、使い勝手が極めて高い。運用や容量の効率化を進める上でも有効な選択肢と言える。

 ユニファイドストレージは、NASとFC-SANなど複数のインタフェースに対応したストレージだ。その普及はまだ緒についたばかりだが、管理ツールを一本化できるメリットは決して小さくない。管理のために新たなスキルを修得する手間を軽減でき、より多くのストレージを一元管理することで管理業務の効率向上が見込めるのである。

 こうしたメリットから、上記のストレージは近年になり急速に企業での採用が増えている。ただし、処理能力の違いなどから適した用途はそれぞれ異なるという。

 鈴木氏によると、iSCSIストレージはローエンドからミドルレンジ、さらに最近ではハイエンド向けにまでパフォーマンスを拡張させており、一般にメールや各種アプリケーションのデータの格納に向いている。NASはローエンドとミドルレンジ向けの製品であり、ファイルサーバが主な用途となる。ユニファイドストレージはNASの延長上に位置付けられ、使い道も同様だという。

 なお、FC-SANはその高い処理能力から、従来、企業の基幹システムで広く採用されてきた。ただし、そうした分野で用いられる製品と比べて安価なものもあり、パッケージと組み合わせることでメールサーバの用途に少なからず用いられているという。

ベンダーのサポートレベルも確認すべし

 これらの点をきちんと押さえ、各種の機能についても必要に応じて知識を深めることで、ベンダーに依存することなくストレージを選択するための力を磨くことができる。そのことがITコストを削減するためにも欠かせないというのが鈴木氏の持論である。

「経営の観点で考えれば、余剰のITコスト削減を欠かすことができない。ベンダーに囲い込まれてしまうと、余剰コストの有無を判別することさえ困難だ。確かに、ストレージを細かな部分まで把握することは困難だろう。だが、継続的な情報収集を通じ、技術を自社でどのように生かせばいいのかといった点で製品を比較検討する力を育成できるはずだ」(鈴木氏)

 一方で、運用やサポートを考慮に入れたベンダー選びも大切であるようだ。データを格納したストレージがトラブルに見舞われると最悪の場合、業務が止まる事態を招きかねない。事業継続性を確保するためにも、事前にベンダーへヒアリングを行い、サポートレベルや過去の実績を確認しておくべきというわけだ。

「サポートにまつわる相談は多くのユーザーから寄せられている。ヒアリング通りのサポートを本当に受けられるかは把握しにくい部分もあるが、せめて情報収集だけは十分に行うべき。一般に、日系ベンダーはサポート力に、外資系ベンダーは技術力に強みを持つケースが多い」(鈴木氏)

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