【第1回】まだ電話だけに頼っているのですか?カスタマーサービスの未来(2/3 ページ)

» 2011年02月23日 08時00分 公開
[伊藤滋伸, 飯塚純也,ジェネシス・ジャパン]

企業戦略としてのソーシャルメディア

 ソーシャルメディアプラットフォームが成熟していくまでの期間、企業側はその大きなパラダイムシフトについていくのに必死だった。前述したマスマーケティングの限界に加え、人海戦術で大量の電話をかけることによる販売手法の見直し、カスタマーサポートを提供していたコールセンター、コンタクトセンターも変革の必要に迫られた。そして新しい形が生まれたのである。

 消費者はソーシャルメディアの中でさまざまな体験をする。その中で企業の“アン”オフィシャルな情報に触れる機会も多い。この透明度の高いプラットフォームでは消費者の生の声が溢れているのだ。企業が提供しているサービスのレベルや、経験した一連の内容、それら喜怒哀楽の多くを消費者はソーシャルメディアプラットフォームの中で共有している。

 企業が一方的にメッセージを伝えても、自社のブランドについて何1つコントロールなどできはしない。消費者はソーシャルメディアを活用することで正当なチカラを持ち、ソーシャルメディアプラットフォームで声を上げる。その集大成が企業のブランドイメージとして確立されていくのだ。今も昔も、中長期的に見ると、消費者の声を聞かない企業は栄えないという点は変わりはないが、望む、望まざるにかかわらず、企業はソーシャルメディアプラットフォームに対応しなくてはならなかった。

 どう対応したかって? まずは名称を「コンタクト」センターから「ソーシャル」センターへ変更した。より効率化を図るために、消費者からのアクセスはその種類、状況、優先度により自動化され、セルフサービスでほとんどの種類の問い合わせに応対することが可能となった。セルフサービスの応対を担うのはボットやアバターと言われる仮想オペレーターだ。彼らは24時間365日休むことなく応対可能だし、FAQデータベースやナレッジマネジメントと密に連携することで、回答の正確性はもとより、ブレがなくメッセージの整合性も保てる。

 え、その無機質な応対が嫌い? ボットはアクセスしてきた人の声の抑揚、微妙なニュアンスまで把握できる。極限まで自動化することによって莫大な人的コストを削減できたが、その対極として必要となるのが人間力だ。人間のオペレーターはボットのサービスを超えるエキスパートでなければならない。エキスパートは社会的地位や収入が高く、一人のプロフェッショナルとして企業に貢献する。

 ソーシャルセンターでは旧来のカスタマーサービス窓口の進化形だけでなく、主に3つの機能が加わった。1つはソーシャルメディアを通じてのマーケティング機能である。ソーシャルメディアプラットフォームは別名“リスニングプラットフォーム”とも呼ばれ、企業が消費者の声に耳を傾ける巨大な場所として発展してきた。日々TwitterやFacebookで何が話題となり、共有されているかを知る、あるいは口コミや情報伝達の大きな媒体としての役割がソーシャルセンターには求められる。

 2つ目は、ソーシャルメディアプラットフォームでの認証機能だ。インテリジェントな機械化が進んだことでユーザー側だけでなく企業もオンライン上の相手を人間なのか機械なのかを判断しなくてはならなくなった。TwitterやFacebookの発信は、人間が語ったのか機械のリアクトなのか、本当の意見なのか炎上のキッカケなのか、敵対する競合会社の仕込みなのかなどを判断する認証をはじめ、企業ブランドセキュリティの機能は今や必須となった。

 最後は、ソーシャルメディアプラットフォームへコンタクトし、連携する機能だ。マスへの訴求効果が薄れる中、企業からの情報発信はソーシャルメディアプラットフォームへと移行したのだ。消費者個人の位置情報やプレゼンス、行動履歴などによって最適な情報を的確に、かつタイムリーにユーザーへ届けるために、消費者のマイソーシャルメディアへ情報を提供する機能がそれを補完した。今やほとんどの人は電話のためでなくソーシャルコミュニケーションやライフログのためにスマートフォンを手にしている。唯一の個人を特定し行動を共にして識別できるデバイスはスマートフォンになった。企業もソーシャルコミュニケーションツールとして消費者のスマートフォンからあらゆる情報を得て、それをコンタクトに生かしている。このようなソーシャルメディア活動が、企業活動の中心となっているのである。

ソーシャルセンターに向けた進化のロードマップ ソーシャルセンターに向けた進化のロードマップ

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