今回の未来ストーリーに登場したソーシャルセンターの世界と、現在のコールセンターやコンタクトセンターの現在の世界とでは何が違うのでしょうか。いくつかの特徴をまとめました。
現在(コンタクトセンターの世の中) | 近未来(ソーシャルセンターの世の中) | |
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情報の発信者 | 企業 | 個人 |
情報のあり方 | 伝達(ブロードキャスト) | 共有(シェア) |
ブランドイメージを構築する担い手 | 企業の広告や情報 | 個人が発信する情報 |
コミュニケーションの組み合わせ | 人対人 | 人対ボット、人対人、消費者対消費者 |
カスタマーサービス担当者に求められるる能力 | 情報伝達能力 | 専門性、コンサルティング能力 |
プライバシーに関する考え方 | 保護する | 必要に応じて発信する |
(1)個人に情報発信の主導権が移る、(2)自分の情報を積極的に出すことで最適なサービスを受ける、(3)コミュニケーションの自動化が進む、(4)人間にはより高い専門性が求められる、といったことが起こり得るのではないでしょうか。
「こんなコンタクトセンターはあり得ない!」「未来といってもまだ先の話でしょ?」と思っているアナタ、認識を改める必要があるかもしれません。“We don’t have a choice on whether we DO social media, the question is how well we DO it.(われわれがソーシャルメディアを活用するかどうかという選択肢はすでにない。問題はいかにうまく活用するかだ)”とエリック・クォルマンが「Social Media Revolution」の中で述べていますが、現在、既に企業でソーシャルメディアを1つのメディアとして専任の人員をアサインし、TwitterやFacebookで活動している例も多く存在します。
ボットによってTwitterのマーケティングを試みたものの、炎上の憂き目にあった企業もあります。参入の障壁は低いものの有効に活用できないとマイナス効果になってしまう危険をはらんでいます。このカスタマーサービスの進化に対応するには、きちんとした「企業としての戦略」が必要となるでしょう。
もう少し現実的な話をしましょう。
既に現存の技術を使い、ソーシャルメディアに対応している企業も増えています。しかし、カスタマーサービスにおいて問題なのは、顧客に対する窓口が常に複数あるということです。例えば、Web、営業窓口、コンタクトセンターなど、複数の顧客接点が存在しています。これからも新しいソーシャルメディアやデバイスの登場によって、こうした接点はさらに増えていくでしょう。その際に問題になるのが、すべての窓口で発信するメッセージが整合性を保てているかということです。例えば、ツイッターではAをBといっているのに、コンタクトセンターではAをCと言ってしまう事態が起きかねません。
こうした問題を解決するのには、どうしたらいいのでしょうか。現在のコンタクトセンターも電話だけでなくメールやチャットなどさまざまなチャネルでコンタクトを受ける形へと変わってきています。そのチャネルの1つにTwitterやFacebookといったソーシャルメディアを追加できるソリューションも既にあります。
こうしたコンタクトチャネル統合ソリューションや、ナレッジマネジメントを利用することで、消費者からの問い合わせに対する回答に一貫性を持たせることや、チャネルをまたいで質問が来た場合、その質問の意図を分析し、徐々に問題の核心に迫るようにすることも可能です。
ここでは、カスタマーサービスを例に取り上げましたが、マーケティングとしてのソーシャルメディア活用も可能です。例えば、Twitterで自社に対するツイートをウォッチしていて、リツイートの履歴を残したり、コンタクトセンターで使われているルーティングの技術を使うことで、あるツイートに対する回答に最適なスキルを持った担当者をアサインするなど、さまざまな応用が可能なのです。
今回述べた内容をカスタマーサービスの世界に取り入れるのに必要な事項を、8つの戦略としてまとめました。
(1)顧客セグメントを見直せ
現在の顧客価値ベースのセグメンテーションではなく、その影響度、フォロワー数、アクセス頻度なども考慮に入れるべきでしょう
(2)サイロを壊せ
サイロとは官僚的とも言われる縦割り型組織を指しますが、部分最適が必ずしも全体最適として機能していないことを知るべきでしょう
(3)ライブサポートを強化せよ
時代はスピードを必要としています。電話にせよ、Webを含むほかのチャネルにせよ、スピーディな対応ができる基盤を作りましょう
(4)ソーシャルリスニングにレバレッジをかけよ
まずは顧客の声を注意深く聴くことです
(5)すべての顧客対面チャネルを強化せよ
企業で働くすべての社員が、ブランドに対してエキスパートであることを強く意識し、学ぶ姿勢を必要とします
(6)ナレッジマネジメントと強力に連携せよ
集合知として公開し、1つのチャネルとして確立しましょう
(7)創造性をもってリスクを取れ
ソーシャルメディアプラットフォームには、こう使うべきだという決まりはありません。その解はそれぞれの企業が持っているのです
(8)旧来のカスタマーサービスをないがしろにするな
逆説的ですが、依存し過ぎてはいけません。消費者はどこにいるのか、常に意識すべきでしょう
既に世の中は動いています。変化しています。企業もその動きについていかないと、生き残れない時代なのです。
皆さん、準備はできていますか?
伊藤滋伸
ジェネシス・ジャパン株式会社 ソリューション・エンジニアリング本部 本部長
DB、Webアプリケーションサーバの数々の外資会社を経た後、経験を生かして外資の日本進出におけるテクニカルインキュベータを担当。後にEメール管理システムやIVRベンダにも携わり、 2007年にジェネシス・ジャパンに入社。技術部門の総責任者としてユーザー企業へのソリューション提案をはじめとしたプリセールス活動を管理している。
飯塚純也
同 ソリューション・エンジニアリング本部 部長
SI会社にて数々のコンタクトセンターシステムの構築に携わった後、2004年にジェネシス・ジャパン入社。現在は主にプロダクトマネジメントを担当。米国本社に対する技術的な窓口であるとともに、日本市場での製品リリースならびに品質向上、チャネルパートナーへの技術担当となっている。
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