第4回 危機対応の3原則と危機管理広報のあり方東北地方太平洋沖地震からの復興 ── リスク管理、危機管理、そして復旧(3/4 ページ)

» 2011年03月17日 08時00分 公開
[戸村智憲,ITmedia]

 ダメージを最小化できたら次は復旧だ。迅速に事業継続するポイントは、本連載の「第1回 大規模震災発生、事業継続7つの要点」の記事にまとめておいた通りだ。それを踏まえた上で復旧までの期間短縮もやはり以下のように2通りに整理できる。

 先ず、被災しても社内でコントロール可能なら、各地の拠点から応援部隊を召集しよう。被災した拠点では出勤がおぼつかないだけではない。負傷したり、家族の安全確保のために避難所から動けない社員もいるだろう。PCのような備品も各拠点に余剰資産があれば、人員と一緒に運んできてもらおう。防災用に無線を備えている企業では、こうした情報共有も行えるだろう。

 社内でコントロール不可能なほど拠点がダメージを負い、応援部隊が期待できないケースも想定しなければいけない。交通機関が麻痺し、応援部隊が被災地入りできないこともあろう。そうした場合は、現有人員でできるだけのことに専念しておくことだ。散乱した書類をまとめ直すだけでも、次なる受注の際に顧客管理や出荷対応が早まる。生産ラインなら、正常な製品が製造できるかチェック・点検しておけば安心だ。

災害の経験を生かす経営へ

 さまざまな努力で早期の復旧が実現できたら、今度は「危機・災害に強い企業づくり」をすることだ。とかく平時は目先の儲けばかりに目が行きがちだ。リスク管理や危機管理への対策は、コストばかりかかるムダなもの、という経営者も多くいる。しかし、失って初めて分かるリスク管理や危機管理の対策を1つひとつ平時から積み重ねることが重要だ。そう理解できるのは、危機に直面して得られる企業の貴重な経験だ。

 2007年の新潟県中越沖地震で生産拠点に大きなダメージを負った自動車部品メーカーがあった。内外の自動車メーカーにピストンリングを提供しているリケンだ。サプライチェーン全体でのリカバリータイム短縮のため、取引先の自動車メーカーから応援部隊が駆けつけたのはまだ記憶に新しい。日本の基幹産業の根幹を揺るがしかねなかった事態に直面し、同社は以後、危機・災害に強い経営を目指した。今では、危機管理・リスク管理のお手本となる企業となっている。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」であってはならない。

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