第4回 危機対応の3原則と危機管理広報のあり方東北地方太平洋沖地震からの復興 ── リスク管理、危機管理、そして復旧(2/4 ページ)

» 2011年03月17日 08時00分 公開
[戸村智憲,ITmedia]

 揺れが落ち着き、周囲の状況が把握できたら、危険エリアから安全エリアに冷静に移動しよう。階段を走って移動しては、前の人に倒れて圧死を招くリスクがある。逃げ方を間違えれば、逃げること自体がリスクになる。火事で煙が充満している危険エリアでは、姿勢を低くして移動しよう。煙は上部にたまり、立って移動すると視界が遮られ、呼吸も難しい。床に近い端っこを這って行くぐらいの方が、視界もクリアで呼吸もしやすい。

 中には、出張先のホテルで夜間に地震を経験することもあるだろう。慣れない場所では不安も増す。日ごろの心掛けとして、非常口・非常灯・部屋の配置などの確認をしておこう。出張でなくとも、枕元にいつも携帯電話を置いておくとよい。緊急地震速報も受信しやすいし、携帯電話がわずかながらの明かりにもなる。

企業レベルの危機対応3原則

 「個人」の生命第一で、幸いにも自分の身を自分で守れたとしよう。そして、家族を守り、ある程度の安全確保ができたら、次なる問題が生じる。企業で働く者の場合は、カイシャという「法人」を守ることが求められる。

 身体への危機を脱したら、衣食住を得るために働く先を守らねば生きてはいけない。企業レベルの危機管理で重要な原則は、以下の3つだ。

  1. ダメージを最小限にする
  2. 復旧までの期間(リカバリータイム)を最短にする
  3. 危機で得た経験を生かした経営変革・改善を行う

 先ずは、ダメージの最小化だ。あなたが幸いにも出勤できたとしよう。そこでオフィスや工場が火災だったらどうするだろうか。火災初期の小さな火なら、消火器で火を消すだろう。やや火の手が強ければ、消防ホースで消化しつつ消防署に連絡し、場合によっては避難するかもしれない。火の手が勢いづいていたら、消火はスプリンクラーに任せ、危険エリアから退避だ。

 この例から見られるように、ダメージの最小化は、自分がコントロールできるかどうかで対応が分かれる。コントロール可能な場合は、ダメージを「初期消火」で最小化する。コントロールできなければ、無理して被害を拡大せず、助けを求め、退避することでダメージを最小化する。

 この際、自己過信しないことが大切だ。これくらい何とかコントロールできると思っても、可燃物が多い職場ではすぐに救援・退避する必要があるだろう。ダメージを最小化する俯瞰の視点が求められる。

 職場の割れたガラスを片づけるのも、ダメージ最小化の原則に従おう。ガラスで手を切ってしまうなど、二次被害を出さないようにする。危険物の除去で職場の仲間がケガをしないようにする。つまり、危険エリアが回復可能(コントロール可能)なら、安全エリア化して業務継続するわけだ。

 工場の生産ラインがダメージを受けることもあろう。その際も修理して使える(コントロール可能)なら修理に取り掛かるが、困難な場合は迅速に廃棄して代替策を講じよう。もったいないと迷っていては迅速な復旧につながらない。ライン上に危険物があれば除去する。余震や火災などで、本来であれば使えたはずの機材まで損傷するのを避けよう。

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