企業が常備すべき「防災グッズ」の再点検生き残るために(1/2 ページ)

大震災をきっかけに多く企業が「生き残るためには?」という意識を強めるようになりました。非常時に事業の継続と社員の安全を確保に不可欠な「防災グッズ」についてまず考えてみましょう。

» 2011年04月11日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 3月11日の地震からほぼ1カ月が経過しました。世間は平静を取り戻しつつありますが、企業ではこれを経験に、「自分たちが生き残るためにどう対応すべきか?」ということを改めて考えるようになりました。今回は身近な「防災グッズ」について考えてみたいと思います。

 防災グッズと簡単に記しましたが、その内容は企業規模によって千差万別です。大企業では自家発電システムで10日間は平時と同じように操業できるところがあります。災害用遊水池や専用消防車、衛星通信による緊急連絡システムを運用する移動専用車などを完備しているところもあります。しかし、日本の企業数の約99%は従業員数100人未満の企業(2006年の総務省調査)ですので、本記事では100人未満の会社を対象に、万が一の場合に必要になるものを取り上げます。基本的には「地震対策」であり、インフルエンザのようなパンデミック対策と共通するところもありますが、一部が異なりますのでその点も踏まえて解説しましょう。

「もう準備は不要ではないか?」という人に

 まず注意したいのは、既に大震災が発生したので「こういう準備は不要だ」と考えてしまう点です。本当にそうでしょうか。

 余震については、今までの統計から大地震の後の2カ月ほどでほぼ終息する傾向が見られます。しかし、今回の地震は多くの地震学者が指摘しているように、大正時代に発生した「関東大震災」とは別のプレートで発生しました(北米プレートとフィリピン海プレートの境界)。今回は北米プレートと太平洋プレートの境界のずれが原因となっています。

 今回の地震が今まで危険だと指摘されてきた北米プレートとフィリピン海プレートの不均衡さをより大きくし、今後、関東大震災級の直下型地震が発生する可能性が高くなったと一部の地震学者が警鐘を鳴らしました。それが本当に起きるのかどうかは、誰にも分かりません。私たちはその可能性がある以上、今回の震災の経験から学び、準備をする必要があると思います。

 消防庁は、Webサイト上で地震などの災害に備えて以下の物品を「非常持ち出し袋」に準備することが必要だと提起しています。これは一般家庭向けですが、企業においても不可欠です。

最低限必要なグッズ(消防庁サイトより)

印かん、現金、救急箱、貯金通帳、懐中電灯、ライター、缶切り、ロウソク、ナイフ、衣類、手袋、ほ乳びん、インスタントラーメン、毛布、FM文字多重放送受信機能付ラジオ、食品、ヘルメット、防災ずきん、電池、水


 企業で重要なものは、印かんでは「社印」や「会社の実印」などです。万が一の場合はすぐに担当責任者がこれらを回収し、避難袋の貴重品入れに保管しておくことが重要です。

 懐中電灯やラジオなどは極力手回しで充電できる電池と併用するタイプが望ましいと思います。電球はLEDなど小電力で明るいものを選択します。また、できれば防水タイプが望ましいです。両方を兼ね備えるのが難しい場合は、それぞれ別々に用意するといいでしょう。軽く、水に浮くようになっているものも実用的です。

 ヘルメットなどは各人の机の下などにつり下げます。いざという時は机の下に非難して、必ず装着できるように普段から訓練をしておきます。食品や電池、水など「消費期限」が定められているものは、毎年定められた方法で適切に交換するなどの準備をすることが重要です。

さらに準備しておくのが望ましいもの

 前述したものは必要最低限のものになります。このほかにも準備しておくことが望ましいものがあります。実際には企業の環境や建物、状況などで大きく異なりますので、関係者間で検討して決めるのが望ましいでしょう。

トランシーバー

 非常時は固定電話や携帯電話、スマートフォンなどが「使えない」と考えるべきです。インターネットも、サービスプロバイダーの状況によって利用できなくなっても不思議ではありません。このような場合、本社と隣接している第一工場、第二工場、近傍の営業所といった環境のような短い距離の通信ではトランシーバーが有効です。免許が不要な特定小電力タイプ(メーカーにより異なります)なら、市街地で100〜200メートル、郊外ならで1〜2キロメートルの範囲で通話ができます。

 通常の米でも良いのですが、万が一の場合は水だけで食べられる非常食専用の「ご飯」(アルファ米)が良いと思います。保存期間も5年ほどですので頻繁に入れ替えをしなくてもすみます。

長期保存水

 通常のミネラルウオーターは製造後1年が賞味期限ですが、災害用の長期保存水は5年です。多少価格が高めですが、保存を考慮するならこちらがお勧めです。さらに優れた10年保存水もあります。

飲料水保存用タンク

 通常のポリタンク容器でも無いよりは良いですが、災害用にはやはり光触媒保存容器がお勧めです。通常のポリタンク容器に水道水を入れても、環境によっては水が5日間程度で腐敗し、飲めなくなる場合もあるようです。しかし、光触媒保存容器なら水道水を入れても3年間は飲用として利用できます。容量も小さなものでは10リットル用から大きなものでは1000リットル(1トン)用まで市販されています。価格は1トン用で15〜20万円程度です。

 容量が1トンであれば、1人に必要な飲料水を1日約3リットルとしても、100人なら3日間は飲み水を心配する必要が無い量です。3人で使うなら100日間程度もちますし、1人なら1年くらいは持ちます。このように考えると、コスト面でも決して割高ではないと思います。

マスク

 特に被災地や液状化現象で地中から水が噴出したところでは必須です。被災地ではさまざま異臭が体に負荷を与えますし、液状化の場所では砂が乾燥して舞い上がります。

 その他に以下のものが挙げられます。

  • 簡易トイレ
  • ガスコンロ(カセットボンベ付き)
  • 缶詰(レトルトは保存期間が短い)
  • 携帯電話用の予備電源(手回しタイプがお勧め。ラジオや懐中電灯とのセットもあります)
  • 発電機(PCが使えるインバータ発電機がお勧め。燃料は「備蓄専用ガソリン缶」なら取り扱いも簡単です。家庭用カセットボンベが使える発電機もあります)
  • 消火器(コンピュータでも消火できる二酸化炭素型や、消火能力の高い粉末型の両方あると良いでしょう)
  • 防災用PC(耐衝撃、耐振動、耐水滴、耐粉じんなど環境が悪くても使えるPC。複数台配置して無線LANや衛星回線に接続できるとその効果は大きいでしょう)
  • ハンディ担架(通常の担架は大きくかさばります。安くて簡単に使えるハンディタイプが事業所に準備されていると心強いでしょう)
  • 折りたたみ自転車
  • 使い捨てカイロ(冬場で暖房がない場合には必須)
  • 防災用防水安全靴
  • レインコート
  • 組み立て式軽量アルミ製ベッド
  • 固形燃料
  • ホイッスル(笛)
  • 防災用キャリーカート(耐荷重が100キログラム以上のもの)
  • ロープ
  • 防水シート
  • 防炎手袋
  • 蛍光塗料スプレー
  • 寝袋兼用リュック
  • 100円ライター(数年で中が空になりますので毎年チェックしましょう)
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