危機の中でもビジネスの継続を支えたコミュニケーションツールの実力(1/2 ページ)

突然の災害によって、平時の業務や仕事仲間とのつながりが途絶えてしまう状況が起きます。危機的な状況でもビジネスの継続性を確保したエピソードを紹介します。

» 2011年04月18日 08時00分 公開
[米野宏明(日本マイクロソフト),ITmedia]

 ここまで数回にわたってユニファイドコミュニケーション(UC)を使ったワークスタイル革新の価値について紹介してきました。ここは、UCの世界で今起こりつつある変化や、さまざまな活用事例を紹介していく予定でしたが、今回は、先月発生した東日本大震災に際し、筆者自身が実際に体験したUCの実力についてお話ししたいと思います。

関係者の安否を素早く確認

相手の居場所や状況を的確に把握できる「プレゼンス」

 本震発生時、筆者は品川の本社オフィスではなく、大手町のショールームでセミナーの登壇中でした。直前に緊急地震速報のアナウンスが流れたこともあり、お客様も含めて誰もけがをしなかったことは幸いでした。しかし大規模な余震も予想されたため、来場者が全員避難し、ショールームはクローズしました。

 筆者は引き続きショールームに残って品川の本社オフィスと連絡をとり、同僚の安否を確認しようとしました。固定電話や携帯電話が集中してつながりづらい状況にあることは周囲の様子から明らかでしたので、普段持ち歩いている11インチの小型ノートPCを開き、UCツールである「Microsoft Lync」クライアントを起動しました。

 以前に紹介のように、Lyncには「プレゼンス」と呼ばれる相手の連絡可能状況を知るための情報が表示されます。Lyncのプレゼンス情報は自動更新されるため、相手の居場所や状態がかなりの精度で分かります。Lyncを起動して筆者が所属するグループの一覧を見ると、「青信号」、つまり「連絡可能」となっている同僚が数人いました。ここで「マルチパーティ(複数人)チャット」を呼び掛けてみました。筆者と同様に外出先からアクセスしている同僚もいましたが、声を掛けた範囲では皆無事で一安心です。「赤信号」のメンバーは、会議など何らかのコミュニケーション中ですのでおそらく大丈夫。「黄色信号」、つまり退席中のユーザーも、何分か退席している状態なのかが表示されますので、地震発生後の退席であれば無事と判断していいでしょう。

 その他にオフラインで状態が不明な同僚もいましたが、その後オンラインになったり「無事です」のようなコメントをつぶやいたりといった行動が確認され、結局このプレゼンス情報だけで、メンバー全員の無事を確認できました。

低帯域で必要最小限のコミュニケーションを維持

 青信号の相手とは、その後も適宜コミュニケーションを続けました。また筆者も青であることを見つけてチャットを呼び掛けてくる同僚もいました。こうした非常時には、どうしても外部からの情報が少なくなりますので、つながりを維持できる人がいる、ということだけでも少し安心できるものです。しかし、あまりに相手が増えると1対1のチャットでは収拾がつかなくなるため、近しい間柄の同僚同士であればこちらで会話を取りまとめることもしました。いわば、散らばっているメンバーが私を媒介としてつながったようなものです。ここで私が抜けたとしても彼らの間での会話は維持されます。こうした「つながり」の波及は、直線的なコミュニケーション手段である電話では、まずできない芸当です。

必要最小限のコミュニケーションを継続できるテキストチャット

 そして何より、このつながりが切れることがなかったことが重要です。シンプルなテキストチャットは、もともと容量を必要としませんし、十分なネットワーク帯域を確保できない場合も、一時的に遅延が発生したとしても電話のように切れたりすることはありません。相手が同じネットワーク上にいて、つながり続けているという安心感は、電話に匹敵するレベルであることを実感しました。

 その後、筆者は帰宅を決意するわけですが、自宅についたのは結局日付が変わってからでした。とても本社に立ち寄るような余裕はなく、持ち帰ったのはノートPC1台だけです。

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