カスペルスキーCEOインタビュー 「ライバル追撃に自信」

ロシアのセキュリティ企業Kaspersky Labは、2011年春に日本での法人ビジネスを強化すると表明した。秋には新製品をリリースし、国内市場で圧倒的シェアを持つライバル企業に挑むという。

» 2011年09月08日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ロシアのセキュリティ企業Kaspersky Labは、4月にセキュリティサービスを手掛けるプロバイダー向けの製品をリリースすると同時に、日本市場での法人ビジネスを強化すると表明した。法人向けウイルス対策ソフト市場は大手による寡占状態が続く。こうした市場での展開について、ユージン・カスペルスキーCEOに話を聞いた。

ユージン・カスペルスキーCEO。3強がひしめくウイルス対策ソフト市場では、同社を含めて4強に名乗りを上げるベンダーが相次いでいる

―― 法人ビジネスの強化を表明してから半年近くが経過しましたが、進展状況は?

カスペルスキー ほぼ計画通りに進んでいます。6月には日本法人のオフィス移転(秋葉原)が完了し、ユーザーサポートや製品の開発および品質向上を手掛けるR&D部門も新設しました。スタッフも20人ほど増員しており、パートナー企業の開拓も順調です。

 直近は個人向け製品のリリースの準備にややリソースを割いていましたが、それも無事に終えましたので、法人ビジネスをいよいよ本格展開するところまで来ています。

―― どのような施策を展開しますか?

カスペルスキー メジャーアップデートとなるエンドポイントセキュリティ製品の「Kaspersky Endpoint Security」の最新版を、日本を含めた世界各国でリリースする予定です。コンシューマー向け製品は1年ごとに新機能を取り入れていますが、法人向けは3〜4年ごとですので、最新版にはコンシューマー向け製品で実績のある複数の機能を取り入れます。具体的には、「アプリケーションコントロール」「デバイスコントロール」「Webコントロール」「システムウォッチャー(改ざん検知)」などを予定しています。

 脅威検出では、最新のデータベースの評価(レピュテーション)情報を参照するクラウド型の仕組みを取り入れます。これと従来型のローカル上での検出を組み合わせたハイブリット型の製品になります。

 また、富士通の運用管理製品「Systemwalker」との連携について認証を取得しました。

―― ライバル企業もクラウド型の脅威検出を採用しています。Kaspersky製品での特徴は?

カスペルスキー 他社製品を見る限り、これまでローカルで行っていたパターンマッチングをクラウド上に移行させ、安全なものについてはローカルでのスキャンをスキップすることで、マシンへの負荷を少なくするというアプローチのようです。当社の場合は少し異なります。

 前述のようにハイブリット型の仕組みなので、まずクラウド上でパターンマッチングを行いますが、ここで安全だと判定したものでも、もう一度ローカルでスキャンし、判定結果の精度を高めるようにしています。クラウド上で「安全だ」と判断したものが、実際には脅威であったというケースがこれまでに見つかっているからです。

 これによってマシンの負荷をあまり軽減できないと思われるかもしれませんが、最適なタイミングでスキャンを実行したり、アルゴリズムを改善したりすることによって、ローカルでスキャンしても負荷が増さないことを確認しています。

―― 近年はITセキュリティ業界でもM&Aや事業の多角化が進んでいます。企業としての今後の成長戦略は?

カスペルスキー 米国のIDCの調査(金額ベースでのベンダーシェア)では、当社はコンシューマー市場で世界3位の位置につけています。上位のSymantecやMcAfeeも成長をしていますが、彼らの成長は買収などによる効果を含めたもので、当社は“アンチマルウェア”の提供に注力することで、ここまで来ました。

 企業の成長には、彼らのようなスタイルがあれば、当社のようなスタイルもあるので、一概にどれが良いかとは言えません。当社は今後も“アンチマルウェア”がビジネスの柱であり、広げるにしても情報漏えい対策といった“アンチマルウェア”の周辺領域に限定しています。アンチマルウェアのニーズはまだまだ高まっていますので、今後もこの戦略で当社の成長を維持・拡大できると確信しています。

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