「日本は震災・原発の危機を乗り越えられると期待」――カスペルスキーCEO

日本での事業拡大のために来日したロシアKasperskyのカスペルスキーCEOは、「日本のセキュリティ市場で長期的にビジネスをしていくことをコミットしたい」と語った。

» 2011年04月18日 08時15分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

 ロシアのセキュリティ企業Kaspersky Labは4月上旬、日本での法人向けセキュリティ事業を大幅に強化する方針を発表した。来日したユージン・カスペルスキーCEOに、国内市場に対する展望や施策などについて聞いた。

―― 日本を含めて世界では法人市場に対してどのように臨んでいますか。

ユージン・カスペルスキーCEO

カスペルスキー どの国や地域でも、われわれは最初にコンシューマー市場から入り、個人ユーザーの信頼を得ることに注力します。コンシューマー市場で一定の評価を得られると、自然と企業や法人からの問い合わせが寄せられるようになり、法人事業の規模が広がっていくという展開ですね。

 当社の製品は個人向けのイメージが強いのですが、企業や法人ユーザーに対してもPC、サーバー、ゲートウェイなどのセキュリティ製品を多数提供していますし、サービスプロバイダーなどのパートナー向けのOEM事業も長年手掛けてきました。

 日本市場で特徴的なのは、パートナーチャンネルにおける信頼が非常に重要だという点です。日本でに法人事業は2006年から取り組んでいますが、ここ数年は多数のパートナーと関係を結ぶことができました。その理由は当社が技術にフォーカスし続けていることが彼らに受け入れられたからだと考えています。長期的に日本市場に根付いたビジネスを実現する準備を2009年から進めてきました。

―― 今回の事業拡大で具体的にどのような投資を計画していますか。

カスペルスキー 日本法人を100%出資子会社としました。オフィスの移転で面積も3倍に広げ、顧客サポートや検証環境の拡充、トレーニングルームなどを新設します。社員も現在の約40人体制から増やします。特に製品開発では5人の技術者を日本に常駐させて、本社との間で品質向上のための協力体制を構築します。マルウェア解析やパッチ開発に当たるサポート担当者も現在の9人から15人に増員する予定です。

 またセキュリティ業界に目を向けると、北米市場を中心に再編が進みつつありますが、当社はこれまで通りアンチマルウェアを中心としてセキュリティ分野にフォーカスし続けます。次のバージョンの法人向け製品では、デバイス制御やWebフィルタリング、暗号化、DLP(情報漏えい対策)などの機能を取り入れる予定ですが、これらは全て自社で開発しています。買収によって他社の技術を入手したり、事業規模を広げたりする考えはありません。

―― 今の事業規模と今後の見通しはいかがでしょうか。

カスペルスキー 市場調査を見ると、2009年の法人向けアンチマルウェア市場での当社のシェアは1%前後でした。現在は3%程度だと思います。日本市場はトレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの大手3社が非常に強いので、中・長期的に腰を据えてビジネスに取り組み、ユーザーやパートナーからの信頼を高めていきたいと思います。2016年にはシェアで30%、コンシューマーと法人の両方の市場でトップシェアになることが目標です。

―― 東日本大震災や原発事故が日本経済に大きな影響を与えるとの見方が広がっています。

カスペルスキー 個人的な見解ですが、日本は今回のような危機的な状況に直面しても必ず復興し、以前よりも力強い存在になると期待しています。過去の大規模な災害や戦災を乗り越えてきた日本の歴史がそれを証明しています。原発事故に対する世界的な懸念は強いのですが、かつてロシアもチェルノブイリ原発事故を経験しました。必ずや事態を収束させ、復興に向けて歩むでしょう。微力ながら当社でも支援をしていきたいと思います。

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