今回は、中堅・中小企業がITを導入する際にしてはいけないことを、失敗事例を紹介しながら説明する。
前回は、中堅・中小企業における経営課題とITサービスの活用方法についてお伝えした。今回は、企業がIT導入するときに「やってはいけないこと」について、事例をまじえて整理する。
企業のITサービス導入に関するデータとして、「日経コンピュータが」2003年と2008年にアンケート調査した結果(図表1-1)を紹介する。このデータによれば、アンケート調査をした企業814社のうち、品質、コスト、納期の3基準すべてで「当初計画通りの成果」を収めたプロジェクト(ITサービスの導入)を成功基準として成功率を算出している。結果、成功した割合は、2008年が「31.1%」、2003年は「26.7%」である。成功率は5年間で上がっているという見方もできるが、そもそも約7割の企業がITサービスの導入に失敗しているということは大きな問題ではないだろうか。
社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)による「システム開発工期アンケート」でも、500人月以上のプロジェクトでは、44%の企業が「予定より遅延する」(工期の遅れが発生)と回答している。
当初の計画通りにいかなかった原因はどこにあるのだろう。費用と納期はほぼ比例するので、プロジェクトが遅れた原因を見れば、なぜ計画通りにいかなかったのか概要はつかめるはずだ。
(図表1-2)を見ると、納期遅れの原因として最も多いのは「要件定義が長くなった」ことである(43.6%)。「要件定義」とは、企業がITサービスを導入することを決定し、導入をしてもらうシステム会社(ベンダ企業)に対して品質(機能)、費用、納期を決めて、プロジェクトをスタートする際の最初に実施するステップである。ここで当初予想をしていなかったことが発生し、要件定義が長くなってしまうという。
要件定義の段階は、プロジェクト範囲を定め、個別業務のシステム仕様を決めていく最も重要な工程である。ここで遅れが発生すると、その後の開発・設計、テストなどのスケジュールに影響が出てしまう。結果として、ここでのつまずきにより大多数の企業がITサービス導入に失敗しているという現状がある。
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