【第3回】IT導入でやってはいけないことまるごと! 中堅・中小企業とIT経営(3/4 ページ)

» 2011年09月13日 08時00分 公開
[春日丈実三菱UFJリサーチ&コンサルティング]

事例2:中堅商社(売上高100億円、従業員80名、拠点10カ所)

 販売管理のパッケージシステムを導入してから5年以上経ち、業務に合わない部分が出てきていた。そこで、オーナー社長のトップダウンで社内システムを全面入れ替えすることになった。対象システムは販売管理、仕入管理、会計管理。システム導入の目的は、管理会計の高度化を実現し、間接業務の効率化を図ることであり、予算は5000万円を想定。

 社内で組成したプロジェクトチームにより、RFP(提案依頼書)を作成して5社から提案をもらった。自社の業務(在庫管理)に最適だと思われる提案をしてくれたB社に決定した。

 要件定義は約2カ月間。プロジェクトチームとシステム会社で要件定義を実施して、システム開発を進めた。プロジェクトはスムースに行き、テスト段階に入ったときに問題が発生した。

 社長のトップダウンでスタートしたプロジェクトであるが、社長は忙しく、システム導入のプロジェクトにはほとんど参加できなかった。プロジェクトリーダーである管理本部長が事あるごとに報告していたはずであるが、プロジェクトの中間報告で、社長の口から「考えていたこととは違う」という意見が出た。

 社長は部門単位の収支について、日次、月次の結果を正確かつ早く見たかったが、経費は輸出入の業務が完了してから確定する部分もあり、社長が求める数字を出そうとすると、現場に過度の負担(予測を実施、実績の入れ直し)が発生してしまう。またシステムのデータ集計についても大幅に見直さなければならなくなった。

 最終的に、社長に納得してもらったものの、「最初から言ってあったことをいまさらできないとはどういうことか」と社長の怒りはしばらく収まらなかった。

失敗原因

 企業内のコミュニケーション不足が最大の原因。プロジェクトリーダーが社長の考える管理会計数値を十分理解しておらず、現状の業務をシステム化することを優先してしまった。

 また、システム会社も社長の要望を直接聞いていて、提案時に「社長のおっしゃっている内容はこのシステムを使えば実現できます!」と話してしまったことが、社長の怒りを買った原因になっている。

 プロジェクトオーナー(今回は社長)の考えでプロジェクト全体が振り回される典型的な例であろう。

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