2012年新春インタビュー

クラウドでゲームのルールを変え、国内企業の良きパートナーに――グーグル2012年 それぞれの「スタート」(2/2 ページ)

» 2012年01月02日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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 海外では、10万人以上の従業員を擁する大企業が、Google Appsを採用しています。現在、国内で最大の事例は2万数千人規模ですが、近いうちに、およそ倍の規模の事例も出てくるでしょう。

 既にクラウドは特別なものではありません。わたしが入社した当初は、数千名規模でもビッグユーザーでした。それはたった1年で数万人規模となり、さらに大きな案件も成立する見込みです。

 ここで興味深いのは、(企業規模という)山を登りきると、今度は裾野(中堅中小市場)にも改めて浸透するサイクルが見られることです。クラウドは当初、中小のユーザーが使い始めましたが、そこで取りこぼした層も「あんなに有名で保守的な企業でもクラウドを導入したんだ」と気付き、使い始めます。

――確かに、クラウドにはITのヒエラルキーがありませんよね。

 そうです。従来はエンタープライズ向けのITが優れていて、コンシューマ向けのITは下位に見られていましたが、クラウドなら中堅中小企業もコンシューマも、エンタープライズと同じ品質のITを利用できます。高品質なITを、誰でも使える時代になったのです。多額のIT初期投資も不要ですから、企業規模を問わずグローバルにビジネスを展開することもできます。

 過去(高度経済成長期以前)の日本企業には、モノや資産がありませんでした。その中でもR&Dをし、業務や生産のプロセスを改善することで、欧米企業に対し競争優位を作り上げたのです。それがいつの間にか、「所有した」資産が足かせとなっているのではないでしょうか。持たざる者から持つものへと変わったことで、資産が負債になってしまうのです。クラウドは、日本企業のビジネスのあり方を見直す、つまりルールチェンジをするための機会になるはずです。

――ビジネスのルールチェンジにつながる新しいキーワードとしては、ソーシャルとモバイルも挙げられます。

 どちらもグーグルにとって、非常に重要なキーワードです。エンタープライズ案件の引き合いも、モバイルがきっかけになることが多いですし、ソーシャルも、Google+をリリースしてからの数カ月で、モバイルに劣らないスピードで進捗しています。

 とはいえ日本企業は、情報セキュリティの観点からその導入や活用に慎重です。持たせない、使わせないというポリシーが定められていることが多く、阻害要因となっています。ソーシャルやモバイルを導入するメリットと、それによって生じるリスクを天秤にかけ、現時点ではリスク回避が重視されている印象があります。このせめぎ合いは当面続くでしょう。

 ですが今後、多くの企業は海外に打って出ます。その際、同期通信を前提とした従来型のビジネスプロセスは成立が困難になると思います。ネットワーク設備が十分でない新興国や、地理的に遠く離れた南米地域と効率よくコミュニケーションするなら、同期通信と非同期通信をシームレスに切り替えられるインフラ――すなわちソーシャルとモバイルが求められます。

 こうなると「リスク回避のためにメリットを取らないことによる直接的なデメリット」が顕在化します。ITのコンシューマ化は、海外進出を図る企業から本格的に進むのではないでしょうか。


 2012年のグーグルは、クラウドのアドバイザーであり、顧客企業の良きパートナーであることを目指します。製品ポートフォリオの拡充だけでなく、エンタープライズ事業ではサポートの品質をより高めていきます。ユーザーの皆さんにお願いしたいのは「ぜひビジネス上の課題をグーグルに共有してほしい」ということです。既に広く使われている検索エンジンや地図サービスと同様に、グーグルのエンタープライズ向けサービスを「ユーザーの業務をつなぐエンジン」としていきます。

六本木ヒルズにあるグーグルのオフィス受付にて
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