2012年のクラウドトレンドを予測するクラウド ビフォア・アフター(2/3 ページ)

» 2012年01月10日 11時32分 公開
[林雅之,ITmedia]

予測その1:クラウドのハイブリッドオープン化が進む

 2011年は、クラウド事業者各社が相次いで低価格のIaaSレイヤーのパブリッククラウドサービスを提供し、低価格とコモディティ化が進んだ。そのためIaaS市場ではサービスの差別化が困難になり、Amazon Web ServiceのEC2/S3のような市場シェアの高いクラウド事業者が規模の経済(スケールメリット)を生かし、市場優位性を獲得した。シェアの高い事業者に多くのパートナー事業者が集まってクラウド上で多種多様のサービスを提供することで、クラウドのエコシステムが形成された。

 一方、特定のクラウド事業者によるベンダーロックイン、いわゆるクラウドロックインを懸念するユーザーも多く、利用用途にあわせてユーザーが自由にサービスの乗り換えや選択ができ、複数のクラウドを管理運用できるユーザー主導(ユーザードリブン)なクラウド環境が求められている。

 そこで注目されているのが、OpenStackやCloudStackなどに代表されるオープンソースのクラウド基盤ソフトウエアと、それらを活用したクラウドサービスやソリューションである。これらは複数のステークホルダーに利点がある。

 ユーザーにとっては、1社のサービスに依存するリスクを回避でき、高機能で拡張性の高いプライベートクラウド環境を構築したり、パブリッククラウドとの連携などマルチクラウドの環境を構築することが容易となる。

 サービスソリューション事業者にとっては、デファクトスタンダードとなるソフトウエアを採用することでサービスのガラパゴス化を回避し、グローバルスタンダードへの対応が可能となる。

 開発者にとっては、OpenStackユーザ会CloudStackユーザ会などの開発者向けコミュニティが充実しており、開発者同士の相互連携によってサービス開発を充実できるといったメリットがある。

 2012年はオープンIaaSでコミュニティにも支えられた事業者連携によるエコシステムが形成され、クラウド市場において存在感を示す年となるだろう。

 クラウドのオープン化の流れは、PaaSにも波及する可能性がある。先述したようにIaaSは差別化が難しいため、PaaS市場が主戦場に移り、中長期的にはPaaSのコモディティ化が進むと予想される。

 オープンPaaSで代表的なものとして、Cloud Foundry やOpenShiftなどが挙げられる。オープンIaaSと同様に開発コミュニティを軸に開発者や事業者の連携が進み、2012年にはこれらを採用したサービスの登場も予想される。

 マイクロソフトのWindows AzureのようなPaaSネイティブの事業者から、サイボウズなどの国内事業者、そしてCloud Foundryなど、PaaS市場の競争環境は激化し、PaaS市場の拡大と構図が大きく変化する可能性がある。

 レイヤーを超えたクラウドのオープン化が進み、それらが相互に組み合わさり管理可能な環境となれば、2012年はユーザーにとっての利便性の高い、オープンハイブリッドクラウドの実現に向かうと予想される。

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