では、メインソリューションはどこから収益を得るのだろうか。当面はシステムの保守契約やカスタマイズ構築が中心になる。保守には、ビジネス会員(月額3500円で、電話によるサポート)とプレミアム会員(同7500円で、出張訪問まで対応)の2モデルを用意する。サプライ用品販売やLAN対応版からの収入も見込んでいる。LAN対応は15クライアントで25万円、50クライアントで40万円と、「有力ベンダーの10分の1以下の価格」(田村氏)に設定した。
「なんだ」と言われそうだが、実はその先がある。PCにインストールした基幹業務ソフトを使う場合、メインソリューションが開発したポータルサイトから財務会計や給与計算などを選択し、利用する。そのポータルサイトのメニューに、例えば、自動車リースや文房具など中小企業の業務に必要なものを調達できる仕組みにした。そこに登録した企業やポータルサイトに広告出稿した企業からの収入も期待している。
これで終わりではない。メインソリューションは、利用者とポータルサイトに参画する企業を増やし、基幹業務ソフトをビジネスインフラに発展させることを狙っている。複数の企業がこのビジネスインフラを使って受発注などを行う。企業同士を結び付ける商談の場やマッチングサイトにもなる。新しいビジネスを始める際、必要な機能を外部から容易に調達もできる。例えば、海外進出にあたって、マニュアルの翻訳が必要になれば、参画する翻訳会社に依頼するといった感覚だ。「1人1人が専用オフィスのように使える」(田村氏)ようなプラットフォームを目指している。
その実現には、ゼロ円ソフトの利用者を増やす必要がある。多くなければ、最終的なモデルにはなれない。田村氏は1万、10万、100万へとユーザーを拡大させることを考えている。現状の約2000という数字は、期待したほどの効果が出るまでにはなっていないようだ。田村氏は「商品としての自信はあるが、当社には資金力がないし、ネームバリューもない。信用もされていないので、なかなか広がらない」と嘆く。
目下のところの策は、全国に販売代理店を設けること。事務機器販売会社や税理士などに呼び掛けて、PCとプリンタの操作方法指導などを含めて月額9200円の料金で、中小企業に提案してもらっている。DM(ダイレクトメール)やセミナーの開催、Webマーケティングの展開など、「コツコツと増やす」(田村氏)作戦である。
「過去のビジネスモデルを壊し、新しいビジネスモデルを創造する」。田村氏がメインソリューションを設立し、ゼロ円ビジネスの事業を始めた最大の理由だ。26歳でIT業界に入った田村氏は、古典的なシステム販売に疑問を持ち始めていた。3文字アルファベットを駆使して、機能の素晴らしさを説明するが、投資に見合う効果が小さい。役立たないシステム、埃をかぶったシステムになってしまうこともある。だから、請求書発行のためだけにしかITを使っていない中小企業も少なくないという。
しかし、彼らはIT活用に関心を失ったわけではない。ITに強い若手の経営者も増えている。コストを抑えて、効果的な活用法を求める経営者もいる。そうした経営者に、無償提供は基幹業務ソフトをベースにするビジネスインフラのメリットを理解してもらう入口になるだろう。しかし、ユーザーが増えなければ、描いたビジネスモデルに到達できない。機能強化し続けなければ、顧客も離れてしまう。人を増やさず、その2つの課題を解決する策を一日も早く見つけ出す必要があるだろう。
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