過去を否定するよりも未来から見た現在を肯定する人生はサーフィンのように(1/2 ページ)

私たちは現在うまくいっていないと、つい過去を振り返って「あのとき、ああしていれば」と思いがちです。でも、「ああしていれば」本当によい結果になったのでしょうか――

» 2012年06月08日 17時00分 公開
[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),ITmedia]

 先日、知人が起業しました。在籍していた会社が不景気の煽りを受けて業績が振るわなくなり、今後の長い人生を考えて決意したそうです。

 先行き不透明な時代の起業ですから、大きな決断だったと思います。これからもきっと大変なことがあるでしょうし、悩むこともあるでしょう。けれども、悩んだ分だけ、他の人より大きい何かが得られるのだと思います。そのチャレンジ精神と勇気に、敬意を表します。

 私は今41歳ですが、起業したのは33歳のときでした。知人の話を聞きながら「今、会社を辞める選択を迫られたらどうするだろう」と考えました。40歳を過ぎると、転職先がなかなか見つからないと聞きます。家族を抱え、将来に不安を抱きながら毎日を過ごしているかもしれません。そう考えたら、33歳で起業するきっかけがあったことがとてもありがたく思えました。

 きっかけといっても、夢や希望を持って起業したわけではありません。むしろその逆で、毎日多くのプレッシャーを感じ、もう、しんどくて仕方なかった。「もういやだ!」――ある一線を越えた日、私は会社を辞める決意をしました。

 それまでもぼんやりと「起業したい」と思ったことは何度かありましたが、その一線を越えなければ、私は起業する勇気を持てなかったのではないかと思います。今思えば、あのしんどい毎日があったおかげで起業を決意できたのです。

 学業、仕事、恋愛、人間関係……あなたも今までに、そのときは「しんどいなぁ」「嫌だなぁ」と思った経験が1つぐらいありませんか。けれども時間が経過すると、嫌だったあの出来事が、よい出来事に変化するのです。むしろ「あのときのおかげで……」と感謝したい気持ちになるのですから、時間の経過って面白いですね。

現在から過去を振り返ると「あのとき、○○していれば……」を考えたくなる

 しかし、今まさに上手くいっていない出来事と向き合っているときはそうではありません。「あのとき、○○していれば……」と、過去の選択ミスを悔いることもあります。

 例えば、あなたはこれまで、何人かの異性を好きになったことがあるでしょう。そして、ある人と付き合います。けれども若かったあのころ、あなたは相手の気持ちを十分に思いやれなかった。そして、不運にも別れの日が訪れます。

 「あの時、こうしていれば別れなかったのに」「もし、別れていなかったとしたら、今もっと幸せになっていたに違いない」などと思ったことが、一度ぐらいはありませんか。

現在から過去を振り返ると、選ばなかった選択肢の方が正しく思えてくる

 けれども、よく考えてください。別の選択肢を選んでいれば、本当に幸せになっていたのでしょうか。実際には誰にも分からないですよね。現状よりもっと悪くなっている可能性だってあるはずです。恋愛なら、相手が借金を抱えてしまうとか、穏和だった相手が急に暴力を振るうようになるとか。

 「あのとき、○○していれば……」と考えたくなるのは、「別の選択肢を選んでいた方が良い結果になっている“はず”だ」という前提があるからです。しかし、実際には良い結果になっているとは限りません。あくまでも、“はず”なのです。

 仕事もそうです。起業や転職など、私たちには人生の選択を迫られるような機会が時々あります。その選択が思い通りになればいいのですが、思い通りにならなかったとき「あのとき、やっぱり起業なんかしなければよかった……」と過去の選択を悔やみます。

 けれども、「起業や転職をあきらめて今の会社に留まる」という選択肢を選んでいたとしても、思い通りになっていたとは限りません。ある日、会社に行ったら玄関に破産手続きに移行する旨の張り紙が張られ愕然とする、といった出来事が突然訪れていたかもしれないからです。

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