「大手とは違うアプローチでIPOを目指す」――台頭するセキュリティ企業の戦略Maker's Voice

英国に本拠を置くセキュリティ企業のSophosは法人顧客に軸足を置いた事業展開で成長を狙う。

» 2012年06月25日 08時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 数あるセキュリティ企業の中で、ウイルス対策ソフトを手掛ける企業はユーザーにとって身近な存在だろう。国内ではトレンドマイクロやシマンテック、マカフィーなどが個人・法人向けに古くから製品を提供していることで認知度が高い。各社と同様にウイルス対策ソフトを手掛ける英Sophosは、法人顧客に特化した事業を展開する。

 Sophosの最高財務責任者を務めるニック・ブレイ氏は、「この市場で27年にわたって事業を展開し、競合とは違って、一貫してビジネスユーザーにフォーカスし続けてきた。非公開企業だが、2012会計年度で約4億ドルの売上高を見込んでおり、数年以内に上場を実現したい」と話す。

 元々同社はウイルス対策製品からスタートしたが、2007年に暗号化ベンダーのUtimaco、2011年にUTMセキュリティベンダーのAstaro、2012年にモバイルセキュリティベンダーのDialogsを買収。競合大手のような総合型セキュリティ企業へと拡大を図るが、ブレイ氏は「対象顧客が明確なので、ニーズに基づく製品開発やM&Aを実行できる。それらをきちんと統合したソリューションとして提供する」と、この点でも法人に特化したビジネスモデルの優位性を強調する(同社はMacやAndroid対応のウイルス対策ソフトを個人向けに提供するが、いずれも無償である)。

日本の成長率がトップ

 日本法人ソフォスの堀昭一社長は、「UNIXやLinuxなど基幹系サーバ向けの販売が好調。直近の四半期でも200%以上の成長を達成した」と話す。2011年に企業を狙ったサイバー攻撃が多発したことや、プライベートクラウドの構築需要が本格化しつつあることなどが追い風になっているようだ。ブレイ氏は、同社のグローバルビジネスでは日本市場の成長率が最も高く、人材採用や拠点拡充などの戦略的投資を拡大させる考えだという。

 総合型セキュリティ企業への展開では今後、脆弱性対策や情報マネジメント、災害復旧対策、クラウドサービスといった分野への進出も視野に入れる。

 「競合各社の中で総合型ソリューションを展開できるのはコンシューマービジネスも手掛ける企業にとどまる。企業顧客にフォーカスする競合はポイントソリューションが主体だ」とブレイ氏。法人顧客に軸足を置く同社が、コンシューマービジネスも手掛ける競合大手のような総合型セキュリティ企業となるかが注目される。

Sophos 最高財務責任者のニック・ブレイ氏(左)とソフォス 社長の堀昭一氏

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