みんなのクラウドは中小企業の味方田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

クラウド事業者のサービスを利用する企業が増える中、みんなのクラウドは中小規模のIT企業に対し、自らIT基盤を構築してクラウドサービスを提供すべきだと説く。

» 2012年07月20日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 「中小IT企業のクラウド事業立ち上げを支援する」。そんな目的で2010年12月に設立したのが、みんなのクラウドだ。Amazonなどが提供するIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)やPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)の環境を利用するIT企業が増えている中で、みんなのクラウドは中小IT企業に自らIT基盤を構築し、クラウド事業を手掛けることを提唱する。

中小企業なら1万円で株主に

 2012年3月、新潟県に本社を置く受託ソフト開発などを展開するウイングがクラウド事業に乗り出した。みんなのクラウドの支援を得る形で、同社に出資するきっとエイエスピー(きっとASP)のクラウドサービスマーケットプレイスなどを利用し、まずは中小企業にサービス提供を開始した。鳥取や鹿児島などの中小IT企業も同様な支援を受けて、クラウド事業を始める予定だという。

 みんなのクラウドの松田利夫社長は「受託ソフト開発の売り上げ減少などに危機感を持ち、変革しなければ生き残れないという経営者の覚悟」と見ている。クラウド市場の立ち上がりで、受託ソフト開発に加えて、OSやソフトなどのインストール作業による売り上げがどんどん小さくなっている。ハードやソフトの売れ行きも落ち込んでいる。こうした市場環境の変化を理解するもの、多くの中小IT企業は事業構造を転換させる方法が分からない。

 「今こそクラウドだ」という声もあるが、中小IT企業の経営者は「クラウド基盤は、資金力のある大手企業が手掛けるもの」と思っている。AmazonやGoogle、salesforce.comなどが用意するIaaSやPaaSを利用し、ユーザーの求める情報システムを安価に構築したり、自社開発したSaaSを提供したりする程度だった。

 だが、オープンソースソフトウェア(OSS)によるクラウド基盤の構築技術が続々と登場したことで、状況は一変した。中小IT企業がそれらを活用し、1台数万円の安価なサーバを調達すれば、クラウド基盤を構築できる。再販可能なサービス商品も豊富になってきた。SaaSを開発した中小IT企業も、自前でクラウド基盤上からサービスを提供できる。みんなのクラウドは、中小IT企業に実現方策を提案するのだ。

 みんなのクラウドは、SaaS・クラウド市場の育成などを目的とする一般社団法人SaaSクラウド・パートナーズ協会がクラウド事業の実践の場として設立したもの。株主は40数社で、同協会が3分の1、同協会のメンバー会社が3分の1の株式を持つ。残りの3分の1は、クラウド事業に名乗りを上げる中小IT企業なら誰でも1万円で株主になれる。

 中小IT企業が主体的にクラウドを始められるようにするためで、株主になった中小IT企業はクラウド事業を展開する際、「みんなのクラウド」というブランドを使える。みんなのクラウドが代理店契約を結んだ大手ITベンダーなどのサービス商品も扱える。きっとASPが再販するクラウドサービスもその1つに当たる。

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