劣悪な顧客サービスはもうごめんだ!G-Force Sydney 2012 Report(1/2 ページ)

アジア太平洋地域のコンタクトセンター関係者に向けたカンファレンス「G-Force Sydney 2012」が今年もオーストラリアで開幕。登壇者たちは口々に世界を救うと意気込む。

» 2012年08月23日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 ロンドンオリンピックで史上最多となる38個のメダルを獲得した日本選手団。今月20日に東京・銀座で行われたメダリストによる凱旋パレードでは、約50万人が沿道に詰め掛けて選手たちにねぎらいの声援を送った。

シドニー市内を南北に走るジョージ・ストリート シドニー市内を南北に走るジョージ・ストリート

 ちょうど同時刻、オーストラリアのシドニーでも、同国のメダリストらが市内随一の目抜き通りであるジョージ・ストリートを中心に凱旋パレードした。南半球のシドニーでは冬から春に季節が移りゆく過程でまだ肌寒いが、その空気を一変するほど周囲を熱気に包みこんだ。

 そのジョージ・ストリートに面したヒルトン・シドニー・ホテルで8月22日(現地時間)、大手コンタクトセンターベンダーの米Genesysはアジア太平洋地域(APAC)のユーザーやパートナーに向けた年次カンファレンス「G-Force Sydney 2012」を開幕した。今回は850人を超える参加者が結集し、例年以上の盛り上がりを見せている。

 初日のオープニングキーノートに登場したのは、2007年10月からGenesysで最高経営責任者(CEO)を務めるポール・セグレ氏だ。セグレ氏は昨年の同カンファレンスには姿を現さなかったため、APACのユーザーにとっては久々のお目見えとなる。また、今年2月にGenesysが仏Alcatel-Lucentから独立するまで、セグレ氏自身もAlcatel-Lucentの要職を兼任していたので、CEOとして新たなスタートを誓う基調講演となった。

独立しても変わらないもの

 講演冒頭でセグレ氏は、Alcatel-Lucentが親会社だった時代を振り返り、「Genesysだけでなく、Alcatel-Lucentのエンタープライズ部門をはじめ、IMS(IP Multimedia Subsystem)、コミュニケーションなど幅広い事業領域に対する責任を負っており、Genesysの事業だけにフォーカスできなかった。カントリーマネジャーのリソースも足りず、業績がそれほど伸びていなかったため研究開発にも投資できなかった」と語った。Alcatel-Lucentから独立したことで、「今まで以上にスピード感を持って、カスタマーサービスという分野を掘り下げられるようになった」とセグレ氏は意気込む。

米Genesysのポール・セグレCEO 米Genesysのポール・セグレCEO

 また、独立した企業となって、これまでと変わるもの、変わらないものを挙げた。セグレ氏は「これまで以上に研究開発やM&Aへの投資を積極的に増やしていく一方で、今までの戦略やロードマップ、製品、そしてカスタマーへの情熱は決して変わることはない。“Saving the World From Bad Customer Service(劣悪なカスタマーサービスから世界を救うこと)”こそがわれわれの使命だ」と力強く宣言した。

 そうした中、Genesysが注力していくのは「SIP(Session Initiation Protocol)」「ビッグデータ」「クラウド」「ソーシャル」「モバイル」という5つの分野である。従来からの主力事業であるSIPは、現在では同社の製品出荷総数の半数以上を占めているほか、APACの顧客140社がSIPを採用し、中国では顧客企業の9割以上がSIP環境だという。

 PBX(構内交換機)からSIPサーバへの移行メリットについて、企業が新たなコンタクトセンターを開設する際のTCO削減に貢献したり、災害対策にもつながるという。例えば、ある格安航空会社(LCC)では、フィリピンで運営していたコールセンターが台風によって水没したが、わずか1日でカスタマーサービスの機能を復旧したそうだ。

 ビッグデータについては、CPUやデータベースなどの技術進歩によって、構造化、非構造化データを含めた大量データを分析し、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を可視化できるようなったとセグレ氏。具体的な製品として、パフォーマンス管理やWeb解析に関する製品を来年にリリースする予定だとしている。

クラウドサービスでKDDIとの協業も

 クラウドに関しては、コンタクトセンターシステムの運用や保守、設定を自社に依存せず外注したいというニーズや、部門や拠点ごとに柔軟なソリューションを導入したいという要望が増えているという。Genesysでは主にサービスプロバイダーと協力してクラウドサービスを強化していく。

 なお同日、ジェネシス・ジャパンとKDDIがクラウドサービスで連携し、ジェネシスのソフトウェア・ライセンスをKDDIが従量制の月額単位で提供するというサービスプロバイダー契約を締結したと発表した。これにより、KDDIはジェネシス製品をベースにしたコンタクトセンターシステム基盤をユーザーのニーズに応じて通信・電話回線サービスにアドオンするクラウド型ソリューションを提供していく。既に、ユーザー企業での稼働を開始しており、今後はEメール、ソーシャルメディア、バックオフィス業務連携など、ジェネシスのカスタマーサービスソリューションに追加していくとしている。

 ソーシャルメディアやモバイルは、Genesysにとっても新たな事業領域となる。その背景には、以前のような電話によるコールセンターへの問い合わせだけでなく、複数のチャネルを活用して、いつでもどこでも企業とコンタクトを取るという消費者行動の変化がある。それに対するソリューションとして、Genesysでは、ソーシャルメディア上で顧客とのやりとりを動的にモニタリング、分析する「Genesys Social Engagement」や、モバイルユーザー向けのカスタマーケアソリューション「Genesys Mobile Engagement」を提供している。

 また、新たなWebサービスとして、2013年1月に「Genesys Web Engagement」をリリースするとアナウンスした。Web上でのユーザー動向をモニタリングするサービスで、ユーザーのアクションに基づき、コンタクトセンターの適切なオペレーターにルーティングできるものだという。

 ところで、今回のG-Forceがテーマに掲げる「create the new conversation(新しい会話を生み出そう)」にはどのような意図があるのだろうか。セグレ氏は「今までの音声通話だけではなく、現在ではチャネルが多様化することでカスタマーサービスは複雑になり、企業と顧客とのシームレスなつながりは難しくなっている。だからこそ、シンプルかつエレガントなサービスが求められる。その基盤をわれわれは提供していくのだ」と力を込めた。

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