続いて登壇したのは、Genesysのグローバルセールス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるTom Eggemeier氏だ。「パーソナル化されたカスタマーサービスが再びホットなテーマになっている」とEggemeier氏は切り出す。
同氏によると、リーマン・ショック直後の2008年から2009年ごろに顧客企業を訪問した際には、コスト削減の要望ばかり耳にしていたという。その後、経済の回復基調に伴い、どうすれば売り上げをアップできるか、新規顧客を獲得できるかという問い合わせを受けるようになった。実際、コンタクトセンターやCRM(顧客情報管理)への投資よりも、新規顧客の獲得に向けた宣伝広告への投資の方が10倍も100倍も大きいというデータが出ているという。
「しかしながら、この5年間で消費者の購買行動は変化している。米Nielsenの調査によると、現在では消費者の7割がソーシャルメディアを信用して使う一方で、企業の宣伝広告を信用しているのは4割に過ぎない。これまで多くの企業が新規顧客の獲得に走り、宣伝広告に大部分を費やしてきた。一方で、カスタマーサービスはおろそかにしてきた。その結果、消費者がネガティブなコメントをソーシャル上に書き、企業の信用が失墜するような状況が現実に数多く生まれている」(Eggemeier氏)
今こそ顧客の囲い込みが改めて見直されているのだと、Eggemeier氏は繰り返し強調した。
GenesysのAPAC統括責任者であるBruce Eidsvik氏も、具体的な事例を交えてカスタマーサービスの重要性を訴える。
例えば、消費者がある商品を初めて購入したとき、彼にとって企業や商品のブランド性、価値、品質は重要になるが、サービスはそれほど重要ではない。サービスの良しあしは顧客となり、十分に理解しないと分からないからだ。ところが、いったん顧客になれば、サービスを最重視し、ブランドや価値は問題ではなくなってしまう。
Eidsvik氏は、米AppleのCEOだったスティーブ・ジョブズ氏の逸話を紹介する。
「自身が所有していたAppleのある製品に不具合があったので、ジョブズ氏は同社のコンタクトセンターに名前を伏せて電話したところ、信じられないようなひどい応対を受けたという。そこでジョブズ氏は『数十億ドル、数百億ドルという製品開発投資が、たった30秒間のうちに受けた劣悪なカスタマーサービスで台無しになってしまった』と嘆いたのだ」(Eidsvik氏)
どんなに素晴らしい製品をつくっても、顧客へのサービス次第ですべて帳消しになってしまうことが多々あるという。「消費者はカスタマーサービスに期待しているということを企業は見つめ直さなくてはならない。だからこそ今、劣悪なカスタマーサービスから世の中を救うべきなのだ」とEidsvik氏は聴衆にメッセージを投げ掛けた。
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