第1回 「恐竜」の再発明? データセンターを丸ごと1つのコンピュータに集約するzEnterprisePureSystemsが生まれたワケ(1/3 ページ)

IBM PureSystemsは、テクノロジーの進化に伴って登場したアーキテクチャー、「Fabric-based Architecture」を採り入れてデザインされた全く新しいコンピュータ。先ずは2010年に同じアーキテクチャーによって生まれ変わったzEnterpriseメインフレームを見ていこう。

» 2012年12月17日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
この夏発表されたSystem zの最新モデル、zEnterprise EC12

 この秋、日本IBMの設立75周年を祝うために来日したIBMの前CEO、サミュエル・パルミサーノ氏は、「THINK Forum Japan」の講演で同社の歴史が長いイノベーションの旅路だったとし、企業が持続的な成長を実現していくためには、コモディティー化への対応とともにリインベンション(reinvention:再発明)が重要だと強調した。

 「PCのように事業の中核をなさないと分かったら撤退する。そうした学習も大切だ。また、リインベンション(reinvention:再発明)という手法もある。IBMはこれによってメインフレーム事業を再生できた」とパルミサーノ氏は胸を張った。

 パルミサーノ氏は、CEOとしてIBMを率いてまだ間もない2004年末、PC事業の売却に踏み切り、価格競争によって採算が悪化していたとはいえ、100億ドルを超える売上規模だった事業に見切りをつけた。

 その一方、滅びゆく「恐竜」とも揶揄されたメインフレームを再生することにも成功している。

 企業のミッションクリティカルな基幹システムは、おおよそ1990年くらいまでは集中処理型のメインフレームがすべて担ってきたと言っていい。このメインフレームを発明し、市場を創造したのがIBMだというのはよく知られている。同社は1960年代、多額の研究開発費を投じ、社運を賭けたSystem/360を生み出した。さまざまな業務に応じてプログラムを開発できた初めての「汎用機」だった。ちなみにSystem/360という名称は、ビジネスから科学技術計算に至るまで、360度さまざまな用途に使えることに由来している。

 このSystem/360は世界中の企業に業務の省力化をもたらし、IBMを巨人へと押し上げたが、オープン化とダウンサイジング、そしてインターネットの潮流が押し寄せた1990年代半ばになると、コンピュータを適用する業務そのものの幅が広がる中で、しだいにメインフレームは劣勢となる。小回りの利くシステムを業務ごとに個別に構築し、それをネットワークでつなぐ分散処理型が主流となったからだ。オープンなミドルウェアやパッケージアプリケーションも充実してきたことから、業務に合わせてアプリケーションをいちから手組みしてきたメインフレームはコスト的にも高くつき、不利でもあった。メインフレームは「恐竜」になぞらえられ、その絶滅をだれもが予想した。

何とも使用効率の悪いオープン系システムの乱立

 しかし、個別に最適化された小回りの利く分散処理型のシステムは、システム間をつなぐインテグレーションに手間が掛かったほか、運用も保守もばらばらに行わなければならず、予想以上に技術者の人的なコストが重荷となることが分かった。

 多くのベンダーが、こうしたサイロ化されたシステムの運用を自動化するソリューションや保守を遠隔から行うサービスを提供したものの、乱立のカオスが解消するわけではない。IBMでハードウェア事業とソフトウェア事業を統括するスティーブ・ミルズ上級副社長兼グループエグゼクティブは、「世界には3260万台ものサーバがあるといわれているが、それらのキャパシティの85%はアイドル状態だ」と指摘する。仮想化技術はもちろんのこと、堅牢かつコンピュータのリソースを極限まで使い切るシステム運用技術の積み重ねがあるメインフレームとは違い、何とも効率が悪いのがオープン系サーバの実態だ。

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