社長が選んだ「2012年の社長」と「2013年の注目企業」松岡功のThink Management

今回は、産業能率大学が先頃発表した「社長が選んだ2012年の社長と2013年の注目企業」の調査結果から、今の時代のマネジメントに求められている要素を探ってみた。

» 2013年01月10日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

「2012年の社長」の1位は稲盛和夫氏

 2013年が始まった。本連載では本年も引き続き、マネジメントについてさまざまな切り口から考えていきたいと思う。新年最初なので、今回はこのタイミングに相応しい話題を取り上げてみたい。

 産業能率大学が先頃、「社長が選んだ2012年の社長と2013年の注目企業」の調査結果を発表した。同調査は2008年から始めて今回で5回目。従業員数が10人以上の企業経営者を対象に昨年11月22日から12月4日にインターネット調査会社を通じて実施したもので、「2012年の社長」は445人、「2013年の注目企業」は373人から有効回答を得たという。

 まず、「2012年の社長」については、2012年の最優秀経営者は誰だと思うかを自由回答で尋ね、現任でなくても同年内に会長・社長・CEOなどに就いていれば有効とした。その結果、トップ10は表1のようになり、日本航空名誉会長の稲盛和夫氏が1位となった。2012年に再上場を果たした日本航空の再建手腕が評価された格好だ。以下、トップ10に名を連ねた経営者が選ばれた理由をみてみよう。

表1 社長が選んだ「2012年の社長」トップ10(産業能率大学の調査より) 表1 社長が選んだ「2012年の社長」トップ10(産業能率大学の調査より)

 1位の稲盛氏については、「JALのV字回復を牽引した」(49歳、卸売・小売業、福岡)、「誰もできないことを成し遂げたと思う」(60歳、サービス業、愛知)、「利益だけを追求せず道理に則り原理原則で経営をされている」(36歳、運輸業、山口)などの理由が挙げられた。

 2010年と2011年の2年連続で1位だった孫正義氏は僅差で2位。「常に攻めの姿勢で経営している」(55歳、運輸業、大阪)、「日本人なら、かつて誰でも持っていた熱い情熱を感じる」(61歳、製造業、栃木)といったコメントが寄せられた。

 3位の柳井正氏については、「着目するところが他の人と違う」(41歳、土木・建設業、鳥取)、「ぶれない方針で世界市場に挑戦している」(67歳、卸売・小売業、愛知)、4位の豊田章男氏については、「企業の利益だけでなく社会全体の利益についても考えている」(55歳、製造業、東京)などが挙げられた。

 以下、5位のティム・クック氏には「次々と新しい製品をつくり、めざましい売れ行き」(67歳、卸売・小売業、兵庫)、6位の根津嘉澄氏には「東京スカイツリーの開業に尽力した」(47歳、サービス業、福井)、7位の津賀一宏氏には「再生への期待を込めて」(60歳、サービス業、大阪)、同じく7位の村上太一氏には「アイデアが素晴らしい」(44歳、土木・建設業、千葉)、9位の平井一夫氏には「復活を期待している」(29歳、製造業、北海道)、同じく9位の井上慎一氏には「目標達成能力に長けている」(44歳、サービス業、長崎)といったコメントが寄せられた。

「2013年の注目企業」の1位はシャープ

 一方、「2013年の注目企業」については表2のようになり、家電事業の不振で逆境に立たされているシャープとパナソニックが1位と2位に名を連ねた。

表2社長が選んだ「2013年の注目企業」トップ10(産業能率大学の調査より) 表2社長が選んだ「2013年の注目企業」トップ10(産業能率大学の調査より)

 1位のシャープについては、「危機から脱出できるか」(50歳、情報サービス業、東京)、「この会社の運命が日本経済の命運を握っていると思う」(38歳、製造業、埼玉)、2位のパナソニックについては、「家電業界が活性化しないと消費が上がらない」(50歳、卸売・小売業、大阪)、「日本を代表する企業だから、ぜひ復活してほしい」(46歳、製造業、京都)などの理由が挙げられた。

 3位のソフトバンクについては、「今後の通信業界の地図を塗り替えると思うから」(52歳、住宅・不動産業、山梨)、「次の手が楽しみな企業」(54歳、製造業、東京)、4位のトヨタ自動車については、「日本経済の牽引役になってほしい」(57歳、製造業、愛知)、「今後の日本のものづくりを左右する会社だから」(54歳、情報サービス業、東京)などが挙げられた。

 以下、5位のソニーには「復活をみたい」(44歳、製造業、静岡)、同じく5位のファーストリテイルングには「次々と何かするような気にされてくれるから」(47歳、サービス業、東京)、7位の米Appleには「スティーブ・ジョブズ亡き後の製品に対する期待と不安」(58歳、サービス業、東京)、同じく7位の日本航空には「再上場の実力が本物かどうか試される」(49歳、卸売・小売業、福岡)、9位の東京電力には「震災復興と原発問題をどう解決していくのか」(49歳、製造業、埼玉)、10位の本田技研工業には「新たな展開に努力するバイタリティー」(57歳、製造業、大阪)といったコメントが寄せられた。

 こうしてみると、「2012年の社長」も「2013年の注目企業」も、選んだ側も経営者だけに、その理由に今の時代のマネジメントに求められている要素が見て取れる。「2012年の社長」の選択理由からキーワードをピックアップするならば、「原理原則」「攻めの経営」「熱い情熱」「ぶれない方針」「社会全体の利益」「目標達成能力」といったところか。考えてみると、これらは今の時代に限らず、マネジメントに求められる基本的な要素ともいえよう。

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