現場で効くデータ活用と業務カイゼン

北海道の医療機関で広がる共用DB、“つながる医療”の懸け橋に医療IT最前線(1/2 ページ)

広大な面積を誇る北海道。遠く離れた医療機関や介護施設をつなぐため、医療関係者自らが作成した“共用データベース”の利用が広がりつつあるようだ。医療関係者向けセミナーで最新事例を取材してきた。

» 2013年02月26日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 さまざまな専門知識が求められるだけでなく、現場に応じて必要な情報が異なるのが医師や看護師をはじめとする医療従事者の仕事だ。それを支えるITシステムの構築には、複雑かつ正確な知識が求められるため、一般のITベンダーでは荷が重いと言えるだろう。そこで現在、医療関係者自らが市販のアプリケーションを使ってデータベース(DB)システムを自作、活用しようとする動きが広がっている。

 そうした活動を推進する団体の1つが、全国の医療関係者300人以上で構成する「日本ユーザーメード医療IT研究会」(略称:J-SUMMITS)である。2月に北海道札幌市で開かれた医療関係者向けセミナー「J-SUMMITS 2013 Site Visits in 北海道」では、北海道ならではの地域性も見られる医療ITの最新事例が紹介されていた。

離れた医療機関同士をつなぐ新システム

 北海道の面積は約8万3500平方メートルと、日本全土(約37万8000平方メートル)の約22%、東京都(約2200平方メートル)の約38倍に及ぶ。こうした広大な土地では必然的に都市とその周辺地域間の距離が大きくなるため、医療や介護の現場でもITを活用した情報共有が重要になる。

photo 有賀氏

 地元の医療機関などで構成する「北海道広域医療連携研究会」は、複数の医療・介護施設が共通で利用できるFileMakerベースの患者情報DBシステム「DASCH」(Databank of Seamless Care in Hokkaido)を開発、提供している。今回のセミナーでは、DASCHを基に2012年に開発された「DASCH Pro ver1.0」が披露された。

 DASCH Proを開発したのは、道内でFileMaker関連のシステム開発を手がけるDBPowers(北海道美瑛町)。代表取締役を務める有賀啓之氏によると、DASCH Proは「単なる業務システムではなく、コミュニケーションツールとしても利用できる仕組みを目指した」という。

 具体的には、医師同士で情報をやり取りするための掲示板機能を充実させたほか、DASCHの開発コミュニティーに属する医師たちが日常的に使う医療用語もシステムに実装。さらに、医療機関で普及しつつあるiPadでの利用にも対応させたという。「iPadでもPCと変わらない使い勝手を提供する」(有賀氏)

photo iPadでのDASCH Pro利用イメージ

 DASCH ProはWebベースのシステムであるため、登録した患者情報はDASCH Proを利用する他の医療機関でもVPN経由で閲覧できる。こうした機能は医療機関同士の連携を促す一方、個人情報の漏出リスクにつながるのではという懸念もあるだろう。そこで同システムでは、ユーザーのアクセス権を「組織内アクセス」「組織間アクセス」に分けて詳しく設定できる機能を実装。さらに、取得したアクセスログを画面上に常に表示することで、利便性とセキュリティ対策を両立させているという。

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