サービスマネジメントの新しい「鼓動」

IT部門の「効率とイノベーションのジレンマ」を解消する「第4のクラウド」IBM Pulse 2013 Report(1/2 ページ)

クラウドが一般化し、モバイルやスマートアセットが増大するなか、それらが生み出すデータ量は莫大だ。効率とイノベーションの板挟みにあるIT部門に対し、IBMが指針を示す。

» 2013年03月06日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
IBM マーケティング担当VPのスコット・ヘブナー氏

 3月4日(現地時間)、IBMによるサービスマネジメントの年次カンファレンス「Pulse」が開幕。2008年から通算6回目を数える今回は8000人にのぼる参加者を迎え、既におなじみとなったラスベガスのMGM Grandを会場としてゼネラルセッションが行われた。

 昨年に続き進行役を務める同社マーケティング担当バイスプレジデントのスコット・ヘブナー氏は「ITとフィジカルアセット(物理資産。従来はITによる管理対象ではなかったビジネスリソース)の間に境界はなくなった」と話す。「前回Pulseを開催した時との違いは、今や多くのフィジカルアセットがスマート化され、相互接続しているということだ」

 その結果もたらされたのがITオペレーションの「ビッグデータ化」だという。従来、データを生み出すのはデータセンターに限られていたが「現在はあらゆるアセットがインテリジェントになり、データセンター化している」(ヘブナー氏)。同氏によればこのような“データセンターの偏在化”は、クラウド分野において700万人にものぼる雇用を生み出すという。反面、調査会社のIDCによれば170万ものクラウド関連求人が埋められないままであったといい(その要因の多くはIT部門のコスト削減)、ヘブナー氏は「ビッグデータ化は(企業にとって)大きなチャンスであると同時に、ビジネスとITのギャップをもたらしかねないものでもある」と指摘する。

 このジレンマをうまく解決した例として、ヘブナー氏がゼネラルセッションの壇上に招いたのは、オーストラリアでトラム(路面電車)を運行している「ヤラ・トラムス」のニール・ロバーツ氏である。氏は同社でICT部門の責任者を務めている。

ヤラ・トラムスの管制室を紹介するロバーツ氏

 ヤラ・トラムスはメルボルンを中心に事業展開している。メルボルンのトラムはおよそ180年の歴史を持ち、1750にのぼる停留所があるという。

 当然、車両をはじめ同社が保有・管理しなければならないアセットは膨大なものだ。それらのオペレーションを最適化するにあたりロバーツ氏が意識したのは「安全運行」「顧客視点」そして「(IT部門による)ビジネス貢献」の3つだという。

 ロバーツ氏はMaximoを選択した。Maximoによってアセットの状況を可視化することで、例えば乗客がスマートフォンで「運行状況を把握し、遅延などがあった場合は最適な代替ルートを検索し、詳細はTwitterで確認する」といったサービスが可能になった。

 また当然、車両や路線に何らかの障害が発生した場合は、そのもようを管制センターでリアルタイムに把握でき、適切な対応策を施せるという。ロバーツ氏は「Maximoのおかげで3つの要素を達成できた」といい、その結果として「IT部門とビジネス部門のパートナーシップが生まれた」と評価する。

 ロバーツ氏は、ヤラ・トラムスが採用を予定している新型車両を聴衆に紹介する。新型車両はセンサーによりテレメトリー(遠隔測定)化されており、車両自体の予測保全だけでなく、トラムの車輪に備えられたセンサーが線路の状態もモニタリングする。

 「近い将来、われわれのアセットは全面的にスマート化して管理することになるだろう」(ロバーツ氏)

ヤラ・トラムスは運行状況を随時スマートフォンで提供している
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