サービスマネジメントの新しい「鼓動」

IT部門の「効率とイノベーションのジレンマ」を解消する「第4のクラウド」IBM Pulse 2013 Report(2/2 ページ)

» 2013年03月06日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
前のページへ 1|2       

インターネットオブシングスが示すクラウドの未来

次世代プラットフォーム担当CTO & GMのダニー・サバー氏。前Tivoli GMでもある

 前回のPulse開催時にTivoliのゼネラルマネジャーを務めていたダニー・サバー氏は現在、次世代プラットフォーム担当CTO & GMの地位にある。ロバーツ氏のセッションを受けて登壇した同氏はこれからのITのビジョンとして「機能が、インテリジェントに、相互接続されること」を挙げる。「サイロはあり得ない。絶対にだ」(サバ―氏)

 クラウドコンピューティングが一般化し、フィジカルアセットのスマート化が進んでいる。またモバイルの利用が拡大し、それらが吐き出すデータ量は莫大だ。またあらゆる点においてセキュリティーの重要度が増している。こういったトレンドによってもたらされているのがビッグデータだというのがサバ―氏の読みだ。

 ビジネス部門にとってこの状況はチャンスである。しかしIT部門は「効率とイノベーションのジレンマ」に直面しているとサバ―氏は指摘する。「2020年までに新車の90%が“スマートカー”になる。IT部門はこういったビジネス環境の変化に対応すると同時に、常にITアセットを統合・最適化していかなければならない」(サバ―氏)

 ではIBMはいかにしてIT部門を支援するのか? サバ―氏は「オープンなクラウド管理基盤」だとする。ユーザーは特定のベンダー、特定の製品を使いたいわけではない。ただワークロードを最適化したいのである。そのためにはプロプライエタリなプラットフォームは障害になるだけでなく、サバ―氏の主張に反しシステムのサイロ化をもたらしかねない。

 「今後、IBMのクラウドサービスとクラウドソフトウェアには、オープンスタンダードを採用する」とサバ―氏は表明する。なかでもクラウドの管理基盤にはOpenStackを採用し、現在β版のIBM SmartCloud OrchestratorもOpenStackをベースに開発を進め、2013年中のリリースを目指すという。

 一口に「クラウド」と言っても、そこにはいくつかの段階があった。まず仮想化による物理サーバの集約。そしてSOAという手法が生まれ、サービスとしてのクラウドがもたらされた。サバ―氏は、あらゆるアセットが可視化され自律的に管理される状態――インターネットオブシングス――こそが「第4のクラウド」だと指摘する。

 「インターネットは、人に情報をもたらすものから、人と人をつなぐものへと変化してきた。そして今、モノとモノをつなぐもの、つまりインターネットオブシングスへとその役割を変えようとしている。この変化を受け入れ、ベネフィットに転換できる企業こそが勝ち残るだろう」(サバ―氏)

セキュアに相互接続されたクラウドやモバイル、そしてスマートアセットが大量のデータを生み出す――これが現在のITの状況だという

「Tivoli」を逆さまに読むと……?

現Tivoli GMのディーパック・アドバニ氏

 サバ―氏に代わり現在Tivoliのゼネラルマネジャーを務めるのが、ゼネラルセッション最後の登壇者となったディーパック・アドバニ氏だ。同氏はサバー氏が挙げた効率とイノベーションのジレンマを、違う角度から指摘する。

 IBMの調査によると、CIOの61%が「IT部門の管理者としてだけでなく、ビジネスリーダーとしてもワークしている」と回答したが、同時に49%が「実施すべきことを実施しきれていない」と認識しているという。これをアドバニ氏は「実行力のギャップ」と表現する。

 例えばアナリティクスによってビジネス部門が何らかの知見を得ても、それをIT部門がシステムとして実装できなければ意味がない。スピードも重要だ。しかし主にコストが原因で、ビジネス部門の要望を満たせていない現状がある。

 この状況を打破するためにIBMが提供するのが、サバー氏も述べたOpenStackベースのクラウド管理基盤だという。「ハイパーバイザーに依存したりベンダーロックインされたりすることなく、ワークロードを柔軟に統合、移植できる。OpenStackのコミュニティーは随時業務別のレシピ(テンプレート)を用意し、それによってIT部門は管理タスクを自動化できる。もはや、クローズドなシステムがイノベーションをもたらすことはない」(アドバニ氏)

 「Tvoliを逆さまに読んでほしい」とアドバニ氏。「I Lov IT。この言葉通り、われわれはIT部門の顧客にフォーカスし続ける」――これが、Tivoliのゼネラルマネジャーに就いて7週間の同氏による「所信表明」である。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ