アジアで加熱するクラウドとビッグデータ、HPが新興市場で狙うものHP World Tour Beijing Report(1/2 ページ)

米国で年次カンファレンスを終えたばかりのHPが世界ツアーをスタート。最初に選んだ地が今なお発展を続ける中国・北京だった。同社は新たな成長軸にアジア太平洋・日本市場を掲げている。

» 2013年06月25日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米HPは6月11〜13日に米国で年次カンファレンス「HP Discover」を開催。これを受けて世界の主要市場を回る「HP World Tour」を24日からスタートさせ、最初の開催地に選んだのが、今なお経済発展を続ける中国・北京だ。初日のメディア向けイベントにはアジア太平洋・日本市場から300人を超える記者らが参加した。まずクラウドを中心とした同社のインフラ戦略における取り組みから切り出した。

インフラ統合を加速させよ

米HP エンタープライズ部門 APJ(Asia Pacific and Japan)地域担当シニアバイスプレジデント ゼネラルマネジャー ジム・メリット氏

 アジア太平洋・日本の各市場つなぐビジネスのためのITインフラではスピード、シンプル性、効率性に対する要求が増している――カンファレンスの冒頭、HPエンタープライズ部門 APJ(Asia Pacific and Japan)地域担当シニアバイスプレジデント ゼネラルマネジャーのジム・メリット氏は、ITインフラを取り巻く3つのトレンドとして、コンバージド・インフラストラクチャ、クラウド、ソフトウェア定義のデータセンターを挙げた。

 コンバージド・インフラストラクチャについては、「当社が業界でも先駆けて掲げたコンセプトだ。分断化状態にあるシステム基盤をプール化し、効率的に使用するというアプローチによって、IT予算の70%近く占める運用コストの削減と、ITリソースの効率化に成功している企業は多い」(メリット氏)という。同士はこのコンセプトを構成するサーバやストレージ、ネットワーク、コンサルティングをはじめとするサービスの全ての領域において、同社がトップクラスのマーケットシェアを既に獲得していると強調した。

 クラウド基盤ではクラウド環境を容易に構築できると2011年に発表した垂直統合型システム「HP Cloud System」の採用がアジア太平洋市場で増えているという。既にグローバルでは1000社への導入があるといい、アジアの新興市場でも導入が拡大。

 例えば、台湾のNational Credit Card Centerでは急増するクレジットカードの電子決済に処理に対応するため、HP Cloud Systemによって4億2300万のトランザクションを処理している。また、中国のヘルスケア技術企業のNeusoftは、9万台以上の医療機器を監視するインフラに、HPが4月に発表した省電力サーバの「HP Moonshot System」を導入。ケーブル量の95%削減や導入期間の83%短縮を実現したという。

HPにはインフラ最適化のポートフォリオがそろっていると強調

 メリット氏は、さまざまな形でのITインフラの最適化を必要とする顧客企業に対して、現状のアセスメントからワークショップを通じて基盤変革のブループリントの提示、試行、設計、導入までのトータルソリューションを提供できると説明した。

ストレージ製品群の強化から

 メリットに続いて登壇したAPJ ストレージ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのマイク・プリート氏は、ストレージ新製品となるミッドレンジ向けオールフラッシュアレイ「3PAR StoreServ 7450」、データ保護ソフトウェア「StoreOnce VSA」、テープライブラリーの「StoreEver MSL6480 Tape Library」を発表した。

 3PAR StoreServ 7450は、プライマリストレージにおける処理の高速化を目的に、最大55万IOPSと0.7ミリ秒未満の低遅延を実現。アプリケーションとデータの利用頻度に応じて2種類のテナントにデータを格納するアーキテクチャを採用する。

 StoreOnce VSAは、遠隔サイトへのデータバックアップやレプリケーションの機能を提供するもので、バーチャルアプライアンスとして動作する。企業でのディザスタリカバリやクラウドサービスプロバイダーのオンラインバックサービスなどに対応するものといい、こうした仕組みの構築に要するハードウェアコストを50%以上、エネルギーコストを70%以上節約できるとしている。

エンタープライズ向け新製品として発表されたのはストレージ

 プリート氏はストレージ新製品の発表を優先した理由を、「APJでは毎年の3けた成長を続け、その他の市場よりも極めて伸び率が高いため」と説明する。メリット氏が触れた、アジアの新興市場でのITインフラ最適化ニーズの急激な高まりの一端がストレージの販売にみて取れる。

 同氏は、Tier1ストレージの再構築が至上命題と呼びかけ、「20年前に誕生した従来のストレージのアーキテクチャでは今の企業が求める俊敏性などの問題を解決できない」と述べた。プライマリストレージを高速化し、セカンダリストレージ以降に使用頻度の低いデータを格納していく階層化を、フラッシュ、HDD、テープの各媒体を最適な形で組み合わせ、StoreOnce VSAなどのソフトウェアで統合的に運用管理していくアプローチを提唱している。

 3PARは中国の2大通信事業者とされるChina TelecomとChina Unicomでも導入。China Telecomでは基幹業務システム処理の高速化、China Unicomでは同社のクラウドサービスの迅速な展開が目的とのことだ。

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