勝利をたぐり寄せる全日本女子バレー・眞鍋監督のコーチング哲学Networld Fes 2013 Report

ネットワールドが開催した「Networld Fes 2013」のオープニング講演に全日本女子バレーボールの眞鍋監督が登場。ロンドンオリンピックで勝つための取り組みを振り返った。

» 2013年07月05日 19時45分 公開
[伏見学,ITmedia]
Networld Fes 2013の会場 Networld Fes 2013の会場

 IT製品やサービスのディストリビューターであるネットワールドは7月5日、自社イベント「Networld Fes 2013」を都内で開催した。オープニングセッションには、全日本女子バレーボールの眞鍋政義監督が登壇し、「自分を知り、チームを知り、敵を知る〜『数字』『データ』が威力を発揮! データバレーの秘密とは?〜」と題した特別講演を行った。眞鍋監督は「勝つためにはチーム全体が一致団結するだけでなく、選手一人一人も自立することが重要なのだ」と強調した。

 眞鍋監督は、2009年に監督就任以来、2010年の世界選手権で銅メダル、2011年のワールドカップで4位、そして2012年のロンドンオリンピックでは28年ぶりとなる銅メダルを獲得するなど、輝かしい戦績を残してきた。その快進撃を支えているのが「データ」だ。試合中、タブレット端末を片手に、選手に指示を出す眞鍋監督の姿をメディアなどで見たことのある方も多いだろう。タブレット端末には、サーブ成功率やアタック数など、選手に関するさまざまなデータがリアルタイムに表示され、眞鍋監督はその情報を基に臨機応変に戦略を組み立てていくのである。

 そんな眞鍋監督が着任からロンドンオリンピックまでの3年半、メダルを獲れる強いチームを作るために掲げたコーチング哲学がある。(1)私はカリスマ監督ではない、(2)モチベーターである、(3)やれることはすべてやる、迷ったらやってみる。この3つだ。

 (1)に関しては、選手たちが監督依存症から脱却するように、コミュニケーションを数多くとり、お互いを知ることを始めた。「日本代表選手でも監督の顔色をうかがうところがあった。そうではなく、選手一人一人が自立し、自覚と自信を持つようにした」と眞鍋監督は振り返る。

 (2)については、いかに選手やスタッフのモチベーションを高めるかに尽力。そのために選手の性格をすべて把握し、怒るタイミングと褒めるタイミングなどまでを細かく決めているのだという。また、時には映像などを活用してチームの結束力を強くするような取り組みを行っているそうだ。その一例が、ロンドンオリンピックの各試合の前日に、選手やスタッフを全員集めて上映した「モチベーションビデオ」である。翌日の相手国に対する心構えや戦う意義、日本チームが勝るポイントなどを1本のドラマティックな作品としてまとめたもので、これを見せることによりチームを奮い立たせた。中には胸が熱くなって泣き出す選手もいたという。

 (3)に関する1つの例として、「日の丸の重みを認識させること」を眞鍋監督は挙げた。それを強烈に植え付けるために、特攻隊員が祀られている鹿児島・知覧に選手を連れて行き、ことあるたびに「我々が負けると日本が負けるんだ」と言い続けたのだという。

 こうした眞鍋監督の徹底ぶりを支えたのは、ロンドンオリンピックを控えた2011年末に逝去した、日本バレーボール協会名誉顧問・松平康隆氏のある言葉だったという。

 「非常識を常識にする。常識の延長線上には常識の答えしかない」

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