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» 2013年06月20日 08時00分 公開

松岡功のThink Management:スポーツ界の不祥事に見る、責任をとらないトップが招く致命傷

今回は、このところ相次いで浮かび上がっているスポーツ界の騒動から、組織のトップはどうあるべきかについて考えてみたい。

[松岡功,ITmedia]

批判を浴びたNPBトップの記者会見

 これは組織のトップがとるべき態度ではない――。このところ相次いで浮かび上がっているスポーツ界の騒動を目の当たりにして、多くの人々がそう感じているのではないだろうか。

 騒動の中心人物は、日本野球機構(NPB)の加藤良三コミッショナーと、全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長である。

 まずは、これまでの報道を基にそれぞれの騒動のあらましについて、両氏が先週、相次いで行った記者会見での発言に注目しながら振り返っておこう。

 NPBの加藤コミッショナーが矢面に立っているのは、NPBがプロ野球で使用している統一球を今シーズンから飛びやすい仕様に変更しながら公表せずにいた問題だ。加藤コミッショナーはまず6月12日に開いた会見で、「事実を隠蔽するつもりは全くなかった。ファンをはじめ、選手や球団、関係各位におわび申し上げたい」と謝罪した。

 会見の前日、NPBは統一球をめぐって日本プロ野球選手会との事務折衝で説明を求められ、経緯を明らかにした。加藤コミッショナーが報告を受けたのも同日だったという。

 NPBによると、昨季の統一球の反発係数において基準を下回るものがあることが判明し、加藤コミッショナーが下田邦夫事務局長に対処を一任。下田事務局長は仕様変更について、現場の混乱を防ぐために公表しないことを決めたという。

 加藤コミッショナーはこの点について、「事務局内部の情報の流れが悪かった。事務局の最高責任者として、おわび申し上げる。知らなかったことの責任は私にある」と言いつつも、「不祥事を起こしたとは思っていない」と自ら辞意を示すことはなかった。

 NPBは6月14日に開かれた12球団代表者会議で今回の経緯を説明。同会議では、第三者委員会を設置して今回の経緯について調査することを決めたものの、加藤コミッショナーの責任を問う声は上がらなかったという。

 同会議後に再び会見を行った加藤コミッショナーは、「今回の失態については猛省している」と幾度も繰り返したものの、辞任については「役目を全うしていきたい」として否定した。ただ、この会見の様子を伝えたテレビ映像には、同氏が手にしていた書類の一番上に「失態」と「猛省」の手書き文字が大きく記されているのが映し出されていた。

顧客離れを招きかねないトップの無責任

 一方、全柔連の上村会長が矢面に立っているのは、暴力や助成金不正受給など相次ぐ不祥事を巡っての責任問題だ。上村会長は6月11日に行われた理事会後の会見で、「責任の取り方はいろいろある。柔道界を正常な姿に戻すのが私の仕事だと理解している」と語り、4月末に示した辞意を撤回して当面続投する考えを表明した。

 上村会長は4月末、助成金問題を調査する第三者委員会が出した中間報告において「全柔連は順法精神に欠ける」と指摘され、「近いうちに進退を明らかにしたい」と語り、6月11日の理事会を決断の目途としていた。

 しかし、第三者委員会の最終報告がまだ出ていない上、内閣府の公益認定等委員会から報告書が不十分として再提出を求められていることから、一連の不祥事に区切りがついていない状況を踏まえて翻意したとみられる。

 上村会長が当面続投する考えを表明した背景には、世間の厳しい批判とは裏腹に内部の支持基盤が厚いことや、自身が直接的に不祥事に関与していないとの認識があるようだ。6月11日に行われた理事会でも、同氏の進退に言及する議論は起きなかったという。ただ一方で、不祥事を起こした理事や指導者を配置したのは、ほかでもない上村会長だとの指摘もある。

 さて、NPBの加藤コミッショナーと全柔連の上村会長に共通するものは何か。まず挙げられるのは、組織のトップとしてのガバナンスに対する意識の欠如である。これはトップが陣頭指揮を執るケースばかりではなく、トップ自らの進退も踏まえての話だ。

 筆者はこれまで多くの組織のトップに取材してきた中で、組織のトップのあり方として1つの見解を持っている。それは、「組織のトップは、関係する全ての人たちとの信頼関係があってこそ、継続して任務を遂行することができる。トップはそのことを自らに厳しく律するべきである」ということだ。それが組織におけるガバナンスの礎になるのではないだろうか。

 もう1つ、両氏に共通するものとして、筆者の頭の中にマネジメント分野でつとに有名な一言が思い浮かんだ。それは、経営学の父であるピーター・ドラッカーがマネジメントの基本として説いた「顧客は誰か」である。

 NPBや全柔連にとっての顧客は、ファンはもちろんのこと、拡大解釈すれば選手やスタッフもそうだ。それぞれの組織のトップである両氏は、果たしてそうした顧客に思いを馳せているだろうか。会見を聞く限り、到底そうは感じられなかった。

 どんな仕事でも顧客から見放されれば、必ず立ち行かなくなる。責任をとらないことがそうした致命傷を招く可能性があることを、組織のトップは肝に銘じておくべきである。

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