ビジネス活用を実現するためのスマートデバイス導入のポイントは?ITmedia エンタープライズ ソリューションセミナー レポート(1/2 ページ)

企業でのスマートデバイス導入事例が増えつつあるものの、活用という視点ではまだまだという企業も少なくない。活用を実現する上ではそれを支えるセキュリティ対策なども不可欠だ。ITmediaエンタ―プライズ編集部主催セミナーではiPadを大量導入した野村證券や活用を支える最新ソリューションが紹介された。

» 2013年07月08日 11時00分 公開
[ITmedia]

活用を大前提にモバイルを導入・展開すべし

 事例セッションに登壇した野村證券は、2012年7月に約8000台のタブレットを大量導入している。このタブレットの導入や展開における体験を国内IT戦略部 店舗サービス開発課 課長代理の本田美保子氏が紹介した。

 本田氏によると、タブレット導入以前の同社には、営業担当者などがノートPCを持ち歩くという文化が無かった。ノートPCの持ち歩きを試験的に行ったものの、起動に時間がかかる、バッテリが持たないなどの点で導入を見送った。ただし、これらの点をクリアできるのであれば検討の余地はあり、その時に登場したのがタブレットだった。

 タブレットに注目した同社では、発売日に社員が店頭に並んで22台の端末を購入。若手社員とIT部門でまずその使い勝手を検証した。地図で顧客先に迷うことなく訪問したり、新しいデバイスを話題に顧客とのコミュニケーションが盛り上がったり、株価情報などを出先でリアルタイムチェックできるといったメリットを確認した。

 これを受けて、同社はタブレットの導入目的を「営業における顧客とのコミュニケーションツール」と位置付けた。なお、ペーパーレス化や業務効率化はあくまで副次的な効果とし、それらの実現を目的の主眼には置かなかった。「多くの目的を追いかけるよりも、経験の少ない若手社員や中堅社員が顧客との関係を深めるという点に目的を絞ったことが良かった」(本田氏)という。

 だが、本格導入に際しては多くの課題も明確になった。8000台ものタブレットを全国177の支店にわずか数カ月で展開しなくてはならず、それを考慮して管理方法やセキュリティ対策、サポート体制などを準備しなくてはならない。管理方法やセキュリティ対策を厳しくすると、逆に社員が使わなくなってしまう恐れもあり、そのバランスをどう両立するかが勘所であった。

 そこで、まず端末の管理はMDM(モバイルデバイス管理)による一元管理とし、アプリケーションはWebポータルを新たに準備して、会社が許可したアプリだけをサイトからインストールできるようにした。ネットワークへの接続は全てVPNによって社内にアクセスさせ、インターネットには社内のプロキシサーバを経由してアクセスする。これらの利用に伴う各種ログも取得して管理できるようにした。セールス用コンテンツは、本社の各部門で管理する体制とした。

 2011年7月からの1000台のテスト導入時に、上述の管理基盤を整備。そして2012年4月から8000台の本格導入に向けての準備を開始し、7月の1カ月で全国に展開した。配布にあたってはセキュリティ対策、必要なアプリやブックマークのインストールなどのキッティングを実施した。操作方法などの問い合わせや紛失時のデータ消去といった対応はヘルプデスク部門が担当した。社員への教育では動画を活用。箱からタブレットを取り出して初期パスワードを変更するといった設定や操作に関する一連の流れを、社員がだれでも分かるように平易な言葉で詳しく説明する内容を心掛けた。

 管理面やセキュリティ面では従来のポリシーやルールを準拠し、技術的な対策が講じられない点については、社員に誓約書を提出してもらうことで対応した。また、社員が勝手にアプリをインストールすることを禁止しており、万一インストールすれば警告してアプリを削除させた。

 8000台のタブレットの展開を終えた後も幾つかの課題が分かったという。その一つがOSのバージョンアップで、検証してみたところ、端末配布時の作業内容を変更する必要が生じ、新機能のセキュリティリスクも評価しなければならなかった。この間に勝手にバージョンアップしてしまう社員もいて、対応方針が確定するまでは端末を強制的に初期化して利用を止める措置をとった。前回のOSのバージョンアップの対応では約1カ月を要したが、先ごろ発表された次のOSバージョンアップにどう対応するかが今の懸念材料だという。

 本田氏は、「こうしたデバイスは2、3年でリプレースするものととらえており、なるべく自社の資産として抱え込まないことが大切」と解説する。そのため、アプリは幾つかの自社開発を除けば、サードパーティの製品をできるだけ活用する。「多少使い勝手が損なわれても、そのうちにより良い製品が提供されることもあるので、結果的にこうしたアプローチの方が良いのではないか」とのことだ。

 現在の導入規模は9000台近くに達しており、その95%が全国の支店で利用されている。早ければ来年夏にも初期導入のリプレースが生じる可能性もある。「遅まきながら、ログから社員の行動分析に着手しており、アプリやコンテンツ提供の改善、タブレット活用によるセールスの成功パターンのモデル化などに取り組んでいる」と話している。

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