手のひら静脈の画像から特徴コードを抽出して照合処理を高速化、富士通研が新技術

手のひら静脈の画像から2048ビットの複数の特徴コードを抽出して、異なるサービスで生体認証情報を利用したり、照合処理を高速化したりできる技術を開発した。

» 2013年08月05日 15時31分 公開
[國谷武史,ITmedia]
利用イメージ

 富士通研究所は8月5日、手のひら静脈の画像から2048ビットの複数の特徴コードを抽出し、異なるサービスで生体認証情報を利用したり、照合処理を高速化したりできる技術の開発に世界で初めて成功したと発表した。2015年度の実用化を目指す。

 開発した新技術は、手のひら静脈の画像から静脈の形状などの特徴を読み取り、2048ビットの「特徴コード」に変換して認証に利用できるようにする。このために、手のひら静脈の画像を登録、照合する際に位置合わせを不要にするための画像の補正や変換技術も開発している。

 静脈画像から特徴コードに変換する条件を変えれば異なる特徴コードを生成でき、サービスごとに異なる特徴コードを利用したり、特徴コードの情報が盗難や漏えいに遭った際にすぐに新しい特徴コードを再登録したりできるという。特徴コードの情報量は手のひら静脈認証に利用する静脈画像の情報の約10分の1と少ない。

 特徴コードによる認証処理では登録済みコードとの相違点を調べ、あるしきい値以下であれば本人と特定する。登録画像と突き合わせてパターンを照合する従来の認証処理を必要としないことから、処理時間は従来の数ミリ秒から1マイクロ秒と大幅に短縮されるという。

 会見した富士通研究所 ソフトウェア技術研究所 セキュアコンピューティング研究部の新崎卓主管研究員は、「生体認証は本人だけが持っている情報を利用する点で安全性が高いものの、情報漏えいなどのリスクから複数のサービスで利用するには抵抗があるというケースも少なくない。特徴コードに変換することで生体認証の利便性を高めたい」と説明している。

特徴コードの生成から照合まで(左)と特徴コードの活用イメージ

 新崎氏によると、生成できる特徴コードのパターンは2の100乗規模になり、大規模な認証処理を必要とするシステムにも適用できるほか、データ量が少ないことから、ICカードに特徴コードを記録して認証に用いることも可能だという。

 現時点で特徴コードによる他人受入率(他人を誤って本人と誤認識する割合)は10万の1レベルだが、本人拒否率(本人を誤って他人と認識する割合)は現行製品よりも高いという。同社では2015年度の実用化を目標に、画像処理技術や特徴コード抽出技術などの改善による認証精度の向上や、新技術を採用した生体認証基盤の設計などに取り組むとしている。

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