クラウドやアナリティクスで競争力を高める米国ホンダとF1レッドブルレーシングIBM Pulse 2014 Report(1/2 ページ)

2日目を迎えた「IBM Pulse 2014」カンファレンスでは、米国ホンダやF1のレッドブルレーシングなどが登場し、クラウドのパワーや高度なアナリティクスによって競争力を高めている顧客事例が紹介された。

» 2014年02月26日 09時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 米国時間の2月25日、ネバダ州ラスベガスのMGMグランドホテルで行われているクラウドカンファレンス「IBM Pulse 2014」は2日目を迎え、クラウドのパワーや高度なアナリティクスから得られる洞察を生かし、その競争力を高めている顧客企業がゼネラルセッションに登場した。特に目を引いたのが、初日のContinentalと同様、自動車業界のHonda North AmericaとRed Bull Racingだった。

 「製造設備の不具合で生産ラインが止まれば、1分ごとに多額の損失が発生してしまう」── Honda North America Servicesでアソシエート・チーフ・エンジニアを務めるヒューゴ・ベルトラン氏は現場の課題をこう話す。

 Honda North America Servicesは昨年春、北米本社がオハイオ州に移転・拡充されたのに伴い、サポート機能を担う新会社として設立された。1980年代半ば、ホンダの米国進出間もないころから働くベルトラン氏も今はこの新会社で全米に展開する15の工場を製造技術面から支援している。

 ご存じのように自動車の組み立て工場では、産業用ロボットをはじめとする自動車製造設備が導入され、多くの作業を担っており、これらの装置にひとたび不具合が発生すると、そのまま多額の損失につながってしまう。

Honda North America Servicesのヒューゴ・ベルトラン氏

 「ミーティングなどを通じて不具合の共通項を見つけ、その原因を探り、解決策を導き出すプロセスが現場には根付いているが、製造工程はとても複雑だ。それぞれの専門家が知恵を絞らなければならないし、30年に及ぶナレッジも継承していかなければならない」とベルトラン氏。

 ベルトラン氏が胸ポケットから取り出した手帳には、すべての製造工程のフローチャートが貼られ、その横には過去の経験から学んだ知見がびっしりと書き込まれている。

 Hondaでは、ITによって生産効率をさらに「カイゼン」するとともに「匠」の知恵も継承すべく、設備・施設の管理で実績がある「IBM Maximo」を導入することにした。Maximoは、IT資産はもちろん、生産、設備、輸送といった企業のさまざまな資産を包括的に把握できる単一のプラットフォームを提供し、資産および作業のデータを収集・分析し、保守などを最適化するソリューション。2006年のMRO Software買収によって旧Tivoli部門に統合していた。

 Maximoは日本海事協会が構築した船舶保守管理システムにも採用されている。船舶の登録・検査・承認を担っている同協会が、船舶の状態監視や保守管理のためのクラウドシステムを構築、船主や船舶管理会社のほか、造船会社、船舶機器メーカー、メンテナンス会社がシステムやデータを共同利用し、船舶のライフサイクルコスト削減につなげようとしている取り組みだ。

 「稼働してまだ9カ月だが、稼働率は5.3%向上した。今後は、より深いアナリティクスによって故障の予兆をつかみ、事前に修理できるようにしたい」とベルトラン氏は話す。

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