ソフトウェアのベンダー別ランキングが映し出すものWeekly Memo

Gartnerが先週発表した2013年の世界ソフトウェア市場におけるベンダー別売上高ランキングは、企業向けITビジネスにおける各社の勢いを映し出したものともいえそうだ。

» 2014年04月07日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

OracleがIBMを抜いて2位に浮上

 米Gartnerが3月31日(米国時間)、2013年の世界ソフトウェア市場に関する調査結果を発表した。それによると、市場規模は4073億ドルとなり、前年に比べて4.8%増加した。

 ベンダー別の売上高ランキングでは、米Microsoftが657億ドルで前年に引き続きトップとなった。前年比の伸び率も6.0%増と市場平均を上回ったことから、前年でも2倍以上あった2位との売上高の差がさらに広がった。

 Microsoftに続いて2位になったのは296億ドルの米Oracleで、前年2位だった米IBMを追い越した。3位になったIBMの売上高は291億ドル。OracleがIBMを抑えて2位に浮上したのは、Gartnerがソフトウェア市場の統計を取り始めて以来初めてのことだという。

 前年比の伸び率では3.4%増と市場平均を下回ったOracleだが、IBMが1.4%増とOracleの伸び率を下回ったため、逆転する形となった。Gartnerによると、ビッグデータへの対応とその分析ニーズが高まっている中でデータベースやクラウド対応のアプリケーションへの企業投資が増加していることが、Oracleのランクアップにつながったのではないか、としている。

 4位は185億ドルの独SAP、5位は64億ドルの米Symantec、6位は56億ドルの米EMC、7位は49億ドルの米Hewlett-Packard(HP)と続いた。4位から7位までの顔ぶれは前年と変わらなかったものの、伸び率ではSAPが9.5%増と好調だった一方、SymantecやHPはそれぞれ0.8%減、2.7%減と前年を下回った。

 8位は48億ドルの米VMwareで、前年8位だった米CA Technologiesを追い越した。CA Technologiesの売上高は42億ドル。前年比の伸び率でVMwareが14.1%増加したのに対し、CA Technologiesは2.6%減少したため、順位が入れ替わる形となった。

 そして10位には38億ドルの米Salesforce.comが、前年の12位から初めてトップ10入りした。前年比の伸び率も33.3%増とトップ10の中で群を抜く勢いだ。Gartnerによると、世界のソフトウェア市場はこの5年間で大きく変化しつつあり、その最大の要因がクラウドサービスの広がりにあるとして、クラウドサービス専業のSalesforce.comがトップ10入りしたのは、そうした市場の変化を如実に表しているという。

2013年の世界ソフトウェア市場におけるベンダー別売上高ランキング(出典:Gartner) 2013年の世界ソフトウェア市場におけるベンダー別売上高ランキング(出典:Gartner)

ソフトウェアがITビジネスの中核である理由

 このベンダー別の売上高ランキングは、ソフトウェアを対象にしたものだが、ハードウェアビジネスが縮小し、クラウドサービスが広がりつつある中で、企業向けITビジネスにおける各社の勢いを映し出したものともいえそうだ。

 ソフトウェアは、一昔前まではハードウェアの付属品のように扱われていたが、今ではOSやミドルウェアがITプラットフォームとなり、アプリケーションが企業のビジネスを支える役目を果たしている。クラウドサービスにおけるPaaSやSaaSもその延長線上にあると捉えることができる。つまり、ベンダーにとってはソフトウェアが企業向けITビジネスの中核を担っているのである。

 そうした企業向けITビジネスにおける位置付けもさることながら、ソフトウェアがベンダーにとって非常に重要な存在となっているのは、ビジネスモデルとして最も収益を生み出すからだ。例えば、上記の売上高ランキングで上位に入っているMicrosoftやOracle、SAPといったソフトウェアビジネス比率の高いベンダーの総売上高営業利益率は、30%台から40%台で推移している。この高収益率が3社の強さの源泉なのである。

 IBMの収益構造からもソフトウェアの重要性が見て取れる。ハードウェア、ソフトウェア、サービスといったITビジネスの全てを展開するIBMにおいて、ソフトウェアの売上高は全体の3分の1程度だが、最近の業績からすると、売上高営業利益率は全体で5%程度なのに対し、ソフトウェアは20%を上回っている。IBMにとってもソフトウェアビジネスは、間違いなく収益の源泉なのである。

 ただ、そうしたビジネスモデルも今後大きく変化するかもしれない。それを予兆しているのが、Salesforce.comの売上高ランキングトップ10入りだ。クラウドサービス専業の同社はこれまで収益を追いかけず、売上高や市場シェアを重視したビジネス展開を図ってきている。それは、資金源である投資家が、これまでのところ収益よりもビジネス規模の拡大を求めているからだ。これは取りも直さず、ビジネス規模において確固たる存在になれば、収益はいつでも生み出せるとみられていることを意味する。つまりは、それがクラウドサービスであるとの見方だ。

 だとすると、今後の企業向けITビジネスの行方を占う上で気になるのは、クラウドサービスで存在感を高めつつある米Amazon Web Services(AWS)や米Googleが、ソフトウェア市場にどのような影響を及ぼすようになってくるかだ。ソフトウェアの位置付けについては先に触れたが、収益構造には少なからず影響が出てくるだろう。そんなことを考えさせられる上記の売上高ランキングだった。

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