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» 2014年04月09日 08時00分 公開

アナリスト・金谷敏尊が斬る! 日本のIT業界に未来はあるのか:【第2回】クラウドが儲からないという真実 (1/2)

メガベンダーの多くはクラウドに消極的であったし、今でもそれは変わらない。クラウドサービス事業への注力は、これまで築き上げた既得権益を損ねる可能性があるからだ。だが一方で、「物売り」を中心とした旧来型のビジネスモデルを堅持するだけで、これからの時代を勝ち残っていけるのだろうか――。

[金谷敏尊(ITR),ITmedia]

連載第1回「ここが変だよ、日本のIT市場」もチェック!

クラウドは儲からない?

 ここ数年の間、「クラウド」は高い求心力を持つキーワードとしてITおよびビジネス市場を席巻した。IT系のイベントやセミナーでは必ずといっていいほどクラウドが取り上げられたし、ベンダーの事業戦略発表や製品リリースにおいても枕詞として頻繁に登場した。最近は勢いが落ちているものの、トレンドとしてのキーワードは顕在である。

 実際、新規プレーヤーの市場参入やサービス拡充の動きも見られ、クラウド市場はいまなお高い伸長率で市場成長を続けている。ITRの調査では、PaaS/IaaS市場の2012年度から2017年度までの年平均成長率(CAGR)は25.7%、2017年度の市場規模は2600億円を超えると予測している。

 そんなクラウドであるが、ITベンダーにとってそれほどまでに魅力的な商材なのだろうか。結論から言えば、顧客企業に対して個別に構築するプライベートクラウドについては、ケースバイケースで「YES」といえる。しかし、ベンダー資産で展開するクラウドサービスについてはおおよそ「NO」である。

 もちろんベンダーの業態や収益モデルによって状況は異なるので、このことは十把一絡げに論じるべきではない。だが、先行投資してムーブメントに乗ろうと意気込んでサービス事業を立ち上げたのはいいが、期待したほど収入が伸びず、黒字転換できないといったベンダーの失敗例は後を絶たないのが実態だ。クラウドサービスで儲かっているベンダーは一握りに過ぎない。

 こうした話をすると、「これからはクラウドだ」と息巻く業界関係者に怪訝そうな顔をされたものだった。2010年前後は特にそうであった。しかし、徐々に市場マインドは変わってきたように思われる。実際にベンダーの中には、周辺サービスに軸足を移したり、競争力のある外部プロバイダーと提携する戦略に切り替えたりする企業も出てきた。「クラウドは儲からない」は、いまや定説といっていいだろう。

なぜベンダーは消極的なのか

 クラウドサービスで儲けるのはなぜ難しいのだろうか。ここではIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)を中心に考えてみたい。クラウドサービス事業はほかの事業と比べたとき、ベンダーにとって不都合な幾つかの要素がある。例えば以下のようなものだ(図1)

図1 クラウドサービス事業が儲からない5つの理由(出典:ITR) 図1 クラウドサービス事業が儲からない5つの理由(出典:ITR)

既存製品の売上減退リスク

 クラウドサービスを手掛けるベンダーやSIerにとって、顧客が既存のオンプレミス向けサービスからクラウドサービスに移行すると、その分ハードウェア製品の売り上げが減退することとなる。いわゆるカニバライゼーション(共食い)の状況を招く。

リセラー/営業スタッフのモチベーション低下

 クラウドサービスの推進は、それまで数千万、数億円という客単価の案件を受注してきた営業スタッフが、数十万円レベルの商いを強いられるようになる。当然、意欲はわきにくい。営業にとっては、小規模な安定収入の積み上げよりも目先の大きな売り上げが重要だ。

低い利益率

 破壊的イノベーターの台頭によって、汎用性の高いクラウドサービスの市場はレッドオーシャンに向かいつつある。各事業者とも薄利多売で勝負せざるを得なくなり、規模経済性が競争力に大きく影響するようになる。

顧客の囲い込みが困難

 ベンダーフリーを求めるユーザーに対して、ベンダーはロックインを指向するのが、一般的なIT業界の構図である。IaaSは、比較的容易に他社へ乗り換えることができるため、客離れのリスクを生じさせる。

資産増加/収益減少による財務的影響

 それまで個別のシステム構築で得られた一定規模の売り上げが、少額のサブスクリプション(月額など)に取って代わることで、収益が一時的に減少する。また、クラウドサービスの事業基盤として投資するハードウェア/設備資産は、貸借対照表に影響を及ぼす。

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