モバイルやソーシャルメディアなどのデータ分析から得た洞察をクラウドの力を借りて新たなビジネスにつなげていく――そんなIBMが掲げる世界観とはどんなものか。IBM Impact 2014の2日目ではその具体例が示された。
米IBMの年次カンファレンス「IBM Impact 2014」が米国ネバダ州ラスベガスで開催されている。2日目となる4月29日の基調講演では初日に同社が掲げた「Composable Business」の内容とその具体的な事例がユーザー企業とともに紹介された。
ここ数年来、IBMはクラウドやソーシャル、モバイル、データアナリティクスといった様々なキーワードを掲げ、ビジネスの変革によるさらなる成長や新たな成功の実現を企業顧客に提案してきたといえる。前日に引き続いて基調講演に登壇したMobileFirst担当ゼネラルマネージャーのマリー・ウィーク氏は、ユーザー体験、柔軟性のあるインフラ、行動可能な洞察こそがComposable Businessの成果を創造するものだと語った。
Composable Businessとは、ITを含めたビジネスに欠かせない色々な要素(ビルディングブロックなどとも表現している)を組み上げて新しいビジネスモデルを構築することだといい、その要素はAPIを通じてクラウドなどからも提供される。将来的にはメインフレームや基幹システムなどに長年蓄積されてきた情報なども加わっていくとしている。
ウィーク氏によれば、Composable Businessに対する企業の意識としては以下の動向がみられる。
IBM自身もまた、世界約40万人の社員の知見をソーシャルやモバイル、クラウドによって生かす基盤を構築し、ビジネスの変革を積み重ねてきたという。「だからこそ、IBMはComposable Businessに挑戦する顧客を手伝う」(ウィーク氏)
Composable Businessを体現する事例として、まず米国インディアナ州に本拠を置く家電・住宅機器販売のhhgreggが登場した。同社でeコマース事業を担当する上級副社長のケビン・ライオンズ氏は、「地方の家電量販店というイメージを変えたかった」と話す。
そのために同氏は、モバイルアプリケーションを通じて消費者の顧客に新たな体験を提供することで関係を深め、全米に知られる同社のブランディングに取り組んだ。2013年のクリスマス商戦をターゲットに定め、約4カ月前からモバイルアプリのリリースとその強化に繰り返し、同社のブランド醸成を進めていったという。開発にはIBMのWorklightなどを採用している。
モバイルアプリ開発で重視したのは、顧客に商品選びを楽しんでもらうことだ。「ストレス無くショッピングできることは当たり前。顧客がどのタイミングで購入を諦めるのかといったさまざまなポイント分析し、UIの改善や操作性の向上などを繰り返し挑んだ。顧客にプッシュするだけでもいけない。顧客が自ら楽しんでくれる工夫もした」(ライオンズ氏)
ブランドが本当の意味で顧客へ浸透するには、それなりの時間を要するという。しかし同社の場合、4カ月という短い期間で達成するために、モバイルアプリではショッピングだけでなく、ユーザー参加型のゲームも加えた。アプリストアでのダウンロード数ランキングの上位にも食い込んだという。
その結果、2013年のクリスマス商戦におけるオンライン販売実績ではコンバージョン率が30%アップし、売り上げは80%もアップしたという。
「Webサイト以上の体験を顧客に提供できたことが成功要因だ。今では社内の業務プロセスも顧客中心に回るようになり、変革を実現することができた」とライオンズ氏。現在では顧客先での設置サービスも提供して“リアル”なシーンでの顧客満足度の向上に取り組む。日本ではおなじみのサービスだが、セルフサービスが当たり前という米国の顧客にとっては斬新なサービスに映っているようだ。
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