クラウドとデータ分析の洞察が作り上げる世界を示すIBMとユーザー企業IBM Impact 2014 Report(2/2 ページ)

» 2014年05月01日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
前のページへ 1|2       

遺伝子解析で薬の副作用を防ぐ新サービス

 続いて登場したのは、Coriell Life Scienceという新興企業。同社は、医薬品投与を受ける人の遺伝子を解析して副作用などの影響を調べ、その情報を担当医師に提供することで正確な投薬を実現するクラウドサービスを提供する。

Coriell Life Scienceのスコット・メギル氏

 同社CEOのスコット・メギル氏は、「米国の高齢者は平均22種類の薬を処方される。薬の副作用による死亡は死因では5番目に多く、投与される薬の半分は全く効果がないとの調査もある」と話す。薬の副作用のリスクを可能な限り軽減することができれば、最終的に社会保障に必要なコストの大幅な節減にもつながっていく。

 ただし、遺伝子情報は人間にとって究極の個人情報ともいえるだけに、セキュリティレベルを極限にまで高めなくてはならない。また、分析と分かりやすいレポートの提供にはたくさんのコンピューティングリソースも必要になるという。

 そこで同社は、解析などのデータの処理にIBM Business Process Manager、データベースにCloudantのサービス、IBMのセキュリティソリューションなどを採用し、これらのシステムをSoftLayerのIaaS上に構築した。

SoftLayer上に構築したシステムの概要

 「こうしたサービスは10年前では不可能、3年前でも非現実的といわれた。それが、今ではクラウドで実現できるようになった」

インフラを忘れるべからず?

 IBM インフォメーション&アナリティクス担当上級副社長のボブ・ピッチアーノ氏は、データを分析するだけではなく、即座に行動につなげられる洞察を得ることが重要だと説く。具体的には、各種のデータソースから気づきを得るだけでなく、データの間に潜む文脈もとらえて意思決定につなげ、迅速に行動を起こしていくという。

 そのための新たな機能として、IBMのクラウドサービスに地理情報分析やデータベース、レポート、数値予測、モバイル活用型コンテンツ管理などが加わった。さらに同氏は、IBMがコードネーム「BlueInsight」という次世代型のデータ・分析サービスの開発に着手していることも明らかにしている。

IBMのスティーブ・ミルズ氏

 基調講演の終盤には、IBM ソフトウェア&システムズ担当上級副社長兼グループエグゼクティブのスティーブ・ミルズ氏が登場。セッションでは一貫してzEnterpriseやSystem z、フラッシュストレージ、日本で24日に発表されたばかりのPOWER8プロセッサなどハードウェアがメインに取り上げられた。

 同氏は、これら製品がクラウドやデータ分析の高速処理、洞察の提供に貢献するものであるかを説明し、「優れたインフラを選択することは優れた情報技術を得るに等しい。ワークロードがいかなるものでも、インフラの選択は大切な要素だ」と締めくくった。

 Pulse 2014やImpact 2014でクラウドへのシフトをより鮮明に打ち出しているIBMだが、その根底を支えるのはIBM伝統のハードウェア技術であるというのが、長年ソフトウェア部門の“顔”であり続けている同氏ならではメッセージだったようだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ