フロリダ州オーランドでSAPPHIRE 2014が開幕、HANAによって顧客企業にイノベーションをもたらすパートナーへと大きく舵を切ったSAPは、「シンプル化」というビジョンを掲げ、第2章へと踏み出した。
「オフィスごっこはもう止めよう」── SAPの年次カンファレンス、「SAPPHIRE NOW 2014 Orlando」の基調講演でビル・マクダーモッドCEOは、全米有数のリゾートでもスーツをしっかりと着込んだ同社の顧客らにそう語り掛けた。少し間はあったものの、会場は大いに沸いた。
米国時間の6月3日、フロリダ州オーランドでSAPPHIRE 2014が開幕、オーランドのオレンジカウンティ・コンベンションセンターに集まった顧客やパートナーらは2万5000人を超え、過去最大の規模となっている。基調講演の詳細は別のレポート記事に譲るが、2010年のSAP HANA発表を機にそれまでの堅実なERPベンダーという殻を破り、顧客企業にイノベーションをもたらすパートナーへと大きく舵を切ったSAPは、自身にとっても大きな課題である「シンプル化」というビジョンを掲げ、第2章へと踏み出した。
「企業は新しい製品やサービスを投入するたびに組織を増やし、複雑化させてきた。もうタマネギのようにむいてもむいても次のレイヤがあり、キリがない。SAPもプロセスを増やし、それをデジタル化・自動化してきたが、どうして友だちとやり取りするようにコラボレーションできないのか? どうしてショッピングサイトで慣れ親しんだ体験ではないのか?」(マクダーモット氏)
「シンプルこそ、究極の洗練」とはレオナルド・ダ・ビンチの言葉だが、それはとても難しい。
SAPは創業以来四十数年、企業規模でビジネスプロセスを統合するエンタープライズビジネスアプリケーションの開発にフォーカスする一方、企業の枠を超えた連携こそが真の競争優位をもたらすとし、「ビジネスネットワーク」構築の重要性も唱えてきた。
2000年代半ば、当時CEOを務めていたヘニング・カガーマン氏による新しい経営のコンセプト、「Business Network Transformation」がそれだ。社員、サプライヤー、顧客、およびパートナーらからなるネットワークを最適化し、イノベーションによって競争優位を勝ち取る一方、差別化につながらないタスクは可能な限り生産性を追求するという経営の考え方だった。
2012年にはカリフォルニア州サニーベールに本社を置く企業間コマースネットワークのAribaを買収、SAPは自らビジネスネットワークサービスの提供に乗り出す。現在、サプライヤーが150万社、取引総額は5000億ドルへと成長、もはやドットコム時代の生き残りというAribaのイメージは過去のものだ。既にAribaネットワークは、HANAプラットフォームへの移行を完了しており、参加企業はより迅速に洞察を得て、これまでにない競争優位を手にすることができるという。
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