企業や人だけでなく、モノもつながるIoT(Internet of Things)を視野に入れ、SAPは「ビジネスネットワーク」に代えて、呼び名こそ「ネットワークエコノミー」に変えたが、根っこの考え方は変わらない。2020年にはその市場規模は90兆ドルに達するとみられている。マクダーモット氏は「地球上の唯一の機会」とさえ呼び、「ケネディはまだ見ぬものを夢見てその実現を語ったが、われわれもネットワークエコノミーを実現したい」と意欲を見せる。
今春からビシャル・シッカ氏の後任としてCTOを務めるバーンド・ロイケ氏はプレスとのQ&Aで「コアアプリケーションのすべてのモジュール、例えば、調達であれ、物流であれ、ビジネスネットワークの機能を追加し、接続できるようにしていく」と話す。
IoTでモノがネットワークにつながるようになれば、メーカーは単に製品をつくるだけでなく、監視による予測保全サービスで付加価値を高めることができるし、すべてを「サービス化」することによって業界の常識を変え、ビジネスを変革することもできる。
「欧州のあるコンプレッサメーカーは、装置の製造から圧縮空気を売るビジネスモデルへ変革した。音楽ビジネスのデジタル化と同じだ」(ロイケ氏)
しかし、膨大に発生するセンサーデータと従来からあるトランザクションデータがばらばらに格納・管理されていたのでは、ビジネスの変革はおろか、プロセスのイノベーションもおぼつかない。ソーシャルやモバイルといったテクノロジーの普及に伴い、メーカー、卸問屋、小売り、消費者というバリューチェーンは、その境界が曖昧になりつつある。メーカーが直接消費者とつながろうとする一方、小売りも自社のブランドを増やしている。バリューチェーン内の主導権争いはもちろん、IoTの進展によっては従来の業界事業構造が破壊され、コネクテッドカーやデジタルヘルスケアのように業界を超えた新しいビジネスモデルも生み出されるとみられている。
「われわれは、HANAをプラットフォームとして顧客のビジネスをシンプル化し、リアルタイムエンタープライズを実現、来たるべきネットワークエコノミーでの成功を後押ししていきたい」とロイケ氏は話す。
SAPはSAPPHIREカンファレンスの前日、主要な25の業界に特化したクラウドソリューションを顧客やパートナーらと共同開発し、SAP HANA Enterprise Cloud上で提供していくことを明らかにした。
ロイケ氏は、「ネットワークエコノミーには大きな機会がある。先ずは顧客のビジネスをシンプル化すべく、業界を変革したいと考えている顧客やパートナーらと一緒に業界標準のビジネスプロセスをHANAプラットフォームという最新テクノロジーで再定義していく」と意気込む。
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