2日目を迎えたSAPの年次カンファレンスは、新たなクラウドサービスや、先進的なクラウドユーザー事例が紹介された。
独SAPはフロリダ州オーランドで年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW Orlando 2013」を開催中だ。2日目となる5月15日(米国時間)、午前の基調講演にはジム・ハガマン・スナーベ共同CEOが登壇し、インメモリやクラウドの技術が世界を変えるとアピールした。
「テクノロジは生命やビジネスの進化に大きく貢献してきた」――。スナーベ氏は冒頭で聴衆にこう語りかける。加えて、電気や天然ガス、石炭、石油などのエネルギー資源を使うことによって人類はより豊かになった。その結果、大量生産が行われ、人口は増加の一途を辿った。
現在、地球の人口は70億人に達し、天然資源は不足するという状況に陥っている。「リソースが枯渇することは人類やビジネスの成長の妨げになる。このまま何もしないというわけにはいかない。テクノロジを使って環境を変えていかねばならない」とスナーベ氏は訴える。
その有効なテクノロジとして、SAPは「インメモリ」や「クラウド」を掲げる。これらを組み合わせたソリューションをエンドユーザーに提供していくとしている。インメモリについて、スナーベ氏は自然科学者のチャールズ・ダーウィンを引き合いに出す。
「ダーウィンは世界を航海して5年間で5000以上の植物、動物などの見本を作った。これは19世紀のビッグデータと呼ぶことができるが、当時のインメモリコンピューティングはダーウィンの脳だった」(スナーベ氏)
そして今、インメモリコンピューティングは「SAP HANA」に取って代わり、そしてまたSAPにおいてクラウドサービスの基盤になっている。その代表例が、今月ローンチしたばかりの「HANA Enterprise Cloud」だ。
HANA Enterprise Cloudは、ERP製品「SAP ERP」、CRM製品「SAP CRM」、データ分析ツール「SAP NetWeaver Business Warehouse」といったエンタープライズ向けのミッションクリティカルなアプリケーションをペタバイト規模の管理型クラウドサービスとして提供するというもの。「HANAのホスティングサービスが可能になった。まさにリアルタイムのクラウドと言えるだろう。これはビジネスを加速するためのユーザー自身のクラウドだ」とスナーベ氏は強調する。ローンチからわずか1週間しかたっていないが、既に導入を開始した企業があるなど引き合いが強いという。
「情報システムの複雑性が企業のビジネススピードのボトルネックになっていた。こうしたシステムをHANAベースのクラウドに移行することで、ランドスケープを簡素化してTCO削減できるだけでなく、新たなビジネス価値をすぐに享受できるようになるのだ」(スナーベ氏)
現在、SAPのクラウドユーザーは2900万人に上る。その大部分を占めるのが、昨年2月にSAPの傘下に加わった米Successfactorsのユーザーだ。基調講演の中では、クラウド活用の先進的なユーザー企業として、食品・飲料メーカーの米PepsiCo、ベアリング製品を手掛ける米Timken、エスプレッソマシンを提供する米Nespressoが紹介された。
PepsiCoは、80カ国以上、約26万人のスタッフを対象に、Successfactorsの人材パフォーマンス管理システムを活用。「日々の急激なビジネス変化に対応するためにも、人材は大きな資産だととらえている。彼らをいかにマネジメントしていくかが重要なのだ」と、同社 バイスプレジデント グローバルHRオペレーション&シェアードサービス担当のShakti Jouhar氏は説明する。
システム導入後、エンドユーザーからは「シンプルなユーザーインタフェースで、アプリケーションは使いやすい」という反応だったという。また、各国にまたがるため複数言語にも対応している点も評価された。
Timkenは、これまで30年間使っていた人事管理システムを刷新。SAPのオンプレミス版ERPシステムとクラウド版HRシステムを連携させることで、グローバルに散在するあらゆる情報を集約することに成功した。
Nespressoは、スピーディーなビジネス成長を目的に、CRMのクラウドサービスをわずか6週間で導入、利用開始した。これによって、セールスプロセスをより良く管理できるなど、営業戦略の基盤として貢献しているそうだ。
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