上述したデータというのは、人的に生成されたデータである。カルビーポテトでは、こうしたデータに加えて、自動的に生成されるデータの活用も推し進めている。それが北海道内の5カ所(十勝3カ所、網走1カ所、上川1カ所)に設置した気象センサシステムから得られるデータだ。2008年に運用をスタートしたセンサシステムは、気象データでじゃがいもの収量予測精度を高めることを目的に、気温、降水量、湿度、風向、風速、日射量などのデータを収集している。それらのデータは10分ごとに自動的にサーバに送られ、担当者が分析を行っている。
データの具体的な活用の一例が、疫病の初発予測だ。収集した気象データと、病害虫発生予察などを行う専門機関「北海道病害虫防除所」が考案した計算式を組み合わせて、独自の疫病予報を契約農家に向けて提供する。この取り組みの効果はてきめんで、予測の精度もさることながら、疫病対策の情報も提供することで「多くの契約農家がこまめに情報をチェックし、適確かつ迅速に対策を講じられるようになった」と小野氏は強調する。
実際には、まだテスト運用の段階であるため、発展の余地は大いに残されている。小野氏によると、将来的は衛星データなども活用して、「畑を掘ったり、茎の長さを測ったりせずに、より精度の高い収量予測ができるようなデータを作り上げたい」と意気込む。
このようなデータをより高度に活用していけば、「必ずや収量アップにつながっていく」と小野氏は自信を見せる。現在、同社の契約農家では平均して1ヘクタール(ha)当たり35トンのじゃがいもが収穫できている。これを1haで40トンにまで収量を上昇させるのが当面の目標である。
農家のモチベーションを高めることも忘れてはいけない。データを駆使して収量を伸ばしたり、緑化や疫病を早期に感知して不作を未然に防いだりするのは、農家にじゃがいもを作り続けてもらうため。彼らが安定して生計を立てられるように、それに必要な環境を提供することがカルビーポテトの責務だと考えている。
「農家にとっては利益が出るかどうかが大切。そうでなければ、じゃがいも栽培から離れてしまう。それを防ぐために、カルビーポテトでは出来る限り農家の手間を減らして収益を上げるような仕組みを作っていかなければならないのだ」(小野氏)
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