MEMS事業を「第4の成長の矢」に 生き残りを賭けるCATV会社の挑戦3カ月でシステムを構築(2/3 ページ)

» 2014年08月25日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

システム構築はたったの3カ月

 先に述べた経営課題の解決に向けて同社は、2011年からLED照明などの事業やBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の実証実験を行っていたという。だが、MEMSに関する専門的なノウハウや経験などは有していなかった。2013年5月頃にBEMSの実証実験などを通じて接点のあった日本IBMからMEMSの提案を受け、ビジネスパートナーに選んだという。

 「日本IBMはこの分野に関する豊富な情報や知見を持っていたのでパートナーに適していると判断しました。MEMS参入を本格的に検討し始めたのは2013年の夏頃です。アグリゲータの第2次公募が実施される可能性も考慮して2013年12月から準備に着手しました。実際に2014年2月に第2次公募が実施されましたが、事前に準備していたことで申請に間に合うことができました」(津滝氏)

東京ケーブルネットワークの津滝氏(右)と磯山氏

 津滝氏によれば、同社は仮にMEMSアグリゲータに採択されなくてもMEMS事業に参入する方針だった。ただ、その場合は電気料金の徴収代行など提供可能なサービスが限られるため、経営課題の解決に大きく貢献する可能性は低い。やはり、MEMSアグリゲータとしてより広範なサービスを提供できる立場になることを目指したという。

 MEMS参入の検討開始からアグリゲータとして必要な事業基盤を準備するまでの時間は、非常に限られていた。またMEMSは有望性が期待されるビジネスではあるものの、新規市場であるだけに将来性については未知数な点も多い。

 事業基盤となるシステムは、電力会社からの高圧受電をマンションの電気室で低圧に変換してマンション内に供給するための設備に加え、スマートメーターの調達・設置、電力使用量などのデータの収集・管理するためのPLCやサーバなどのコンピュータ機器、電気料金の計算や契約者に対する課金、料金徴収を担うシステムなどで構成され、多額の設備投資を伴う。TCNではシステムの構築や運用、スマートメーターの調達に関して日本IBMの支援を活用することとした。

 特に、スマートメーターからのデータ収集や電気料金の計算などのアプリケーションは構築期間の短縮と開発コストを抑制するために、パッケージとクラウドサービスを積極的に利用した。アプリケーションはIBMの製品と協和エクシオの業務支援ソフト「Adaptive Biz Service」をベースに、将来の電力料金プランの多様化に対応できるためのカスタマイズを加え、IBMのIaaSサービス「SoftLayer」で運用する。2014年2月中旬に構築に着手し、同年5月に完了した。期間は約3カ月間だ。

 なお、加入者に対する課金や料金徴収などについては新システムからデータをエクスポートし、放送や通信サービス加入者の情報を管理する基幹業務システム(SMS:Subscriber Management System)に取り込んで、包括的に行う仕組みにしている。SMSの次期更改でMEMS関連システムとしての統合を検討していくという。

TCNが構築したシステム

 「SMSを自社開発した経験から、新システムを最初から手作りすれば2年近くかかると想定されました。期間やコストを抑えるために、今回は実績のある製品をカスタマイズして開発しており、そのためにこれまでの動作検証などでもトラブルになるような点は発生していません」(津滝氏)

 将来性が未知数な点も、クラウドをベースにしたシステムであれば、市場の変化に柔軟に対応できることが採用理由になった。「予想以上の成長となるか、伸び悩むのかについて確実な判断は難しいといえ、クラウドであれば対応がしやすいと言えます。また、ハードウェアなどの資産を持たないことで、将来的に季節や時間帯などのピークとそれ以外で異なる電気料金プランを組み合わせたサービスの提供など、ビジネスの様々な可能性に挑戦できるメリットもあると考えています」(津滝氏)

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