民間企業における「マイナンバー」対応の具体的な内容と注意点(前編)マイナンバー・企業の対応と注意点(1/2 ページ)

2015年10月から「番号制度(マイナンバー)」が始まります。今回からは一般的な民間企業を対象に、マイナンバー導入に向けた具体的な対応内容と注意点について説明します。

» 2014年10月07日 08時00分 公開

 前回の記事の中で、民間企業の番号制度対応について、分野・組織別に実施すべきことの概要を説明しました。今回は、個人番号関係事務実施者として全ての民間企業において一般的に求められる対応事項の具体的な内容及び注意点について、現時点で明らかになっている範囲で、説明します。

 なお、前回の記事にあった健康保険組合や企業年金事業者等の「個人番号利用事務実施者」としての民間企業や、金融機関のような特定の業種は必ずしも一致しない部分がありますのでご留意下さい。

 また、本稿は、「個人番号(マイナンバー)」に関する対応事項のみを記載していますが、民間企業では、「法人番号」の利用に向けた対応(例えば、税分野の法定調書等については、2016年1月から法人番号を記載することが必要になる予定であり、システム化している企業では改修などの対応が必要となる等)が求められます。法人番号は、個人番号とは異なり利用範囲の制約がないため、誰でも自由に利用でき、個人番号のような情報の保護や安全管理のための義務も課されません。

番号利用開始(2016年1月)までの対応事項とスケジュール

 民間企業における番号利用開始(2016年1月)までの対応事項は、大きく以下(1)〜(5)に分けられます。

  1. 番号制度対応の準備(番号制度の理解、体制整備等)
  2. 個人番号を取り扱う対象事務の明確化
  3. 個人番号を取り扱う対象事務の運用整理(個人番号の適正な取扱いルール等)
  4. 個人番号を取り扱う対象事務に係るシステムの改修
  5. 個人番号を取り扱う従業員に対する研修、周知

 なお、民間企業が個人番号を含む個人情報(特定個人情報)を取り扱う際に求められる保護措置(利用制限、安全管理措置、提供制限)については、具体的な対応方針等が「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(仮称)(事業者編)」として取りまとめられる予定であり、2014年9月18日にはその素案Ver.2(以下、「ガイドライン素案」)が公表されています。

 そこで、今回の記事ではガイドライン素案の記載も参考にしながら、民間企業における番号制度対応の内容を(1)から順に説明します。

1.番号制度対応の準備(番号制度の理解、体制整備等)

 まずは番号制度の概要や民間企業の位置付け・役割等について、正しい内容を把握し、理解を深めることが必要です。

 例えば、個人番号は「限られた事務の範囲内のみ」で利用できることを確認しておく必要があります。民間企業は前回の記事で説明したとおり、従業員等の個人番号を収集する必要があり、収集した個人番号は従業員一人ひとりを一意に識別できるため、「個人番号で従業員情報を管理すれば便利だ」と考える民間企業の担当者がいるかもしれません。

 しかし、民間企業が個人番号を取り扱うことができるのは「給与事務、法定調書作成等の事務(個人番号関係事務)」のみであるため、注意が必要です。

 その他、民間企業が理解しておくべき事項について、内閣官房のホームページ内の「よくある質問(FAQ) 4・民間事業者における取扱いに関する質問」に掲載されているので、一度確認することをお勧めします。

 また、番号制度が導入されると給与や経理等、個人番号関係事務に関わる部署において個人番号を取り扱うことになります。このような関係部署が中心となって、個人番号への対応を進めることになると考えられますが、従業員から個人番号を取得する等、組織全体へ影響するものであるため、個人番号対応やそのための準備組織を企業内においてオーソライズしておくことが重要になります。

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