オムニチャネル化のためのIT投資に、企業は何を考えるべきか。「メガネスーパー」が率先して実践したオムニチャネル戦略の好例を、オムニチャネル/デジタルマーケティングの開拓者 グランドデザインの小川和也氏に解説してもらった。今後のIT投資の考えるうえでの参考にしてほしい。
全国約300店舗のメガネ店を展開するメガネスーパー。1970年代から続く老舗の全国チェーンだが、昨今は低価格販売店が台頭し、新たな戦略が不可欠となった。その1つとして、独自のオムニチャネルの取り組みにより差別化を図り、それが成果として実を結び始めているという。メガネスーパー 取締役執行役員事業推進担当の束原俊哉氏にインタビューを行い、同社のオムニチャネル戦略のポイントを探ろう。
実店舗とECを顧客視点でシームレス化することが重要だと考えた同社は、まずそれまで課題の多かった顧客接点の1つつである「ECのテコ入れ」に着手したという。メガネは、視力の検査や個々に異なるレンズ仕様、試着などの要素が絡むため、ECのみで販売することの障壁が高い商品である。このため、同社もECへの注力をしきれないでいた。
2008年からECを展開していたものの、売上のおよそ9割が価格競争の激しいコンタクトレンズであった。その中で、いかに「度付きのメガネ」を販売するかを課題としていた。同社は2013年12月3日、直営オンラインサイトを「メガネスーパー公式通販サイト」として全面リニューアル。店舗か直営ECサイトでメガネやコンタクトレンズを購入したことがある顧客であれば、細かい度数を指定せずに直営ECサイトで簡単に購入できる仕組みなどを設けた。
さらに、スマートフォン完全対応化やバックグラウンドのCRM(顧客管理・購買履歴管理システム)機能を有効に使い、リピート売上の促進、販売施策展開のスピードアップに注力。そして2014年7月には、大手メガネチェーンとして初めて、ECサイトでの「メガネの試着サービス」をはじめた。
メガネの試着サービスは「試着しないと、自分に合っているか分からない。(ネット通販のほうが楽なのは知っているが)ネット通販では買いにくい」と思っていた客の心をとらえた。客はネットで申し込み、無料で5本まで自宅で試着できる。当然、買わない商品は返品できる。メガネの通販における客の課題をうまく解決した。試着は度なしレンズ付きのフレームで行い、レンズをセットするため店舗へ訪れてもらう流れもつくった(返送でセットしてもらうことも可能)。これらの取り組みが功を奏し、EC経由でも度付きメガネが売れるようになった。リニューアル当月となる2013年12月のEC売上が前年比210.3%に、 2014年8月までの累計売上も前年比174.2%と急拡大したという。
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