親戚へのあいさつ回りで出会った、ビックリなセキュリティ話萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/2 ページ)

» 2015年01月23日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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団塊世代の“戦い”から

 親族に団塊世代の女性(仮にAさんとする)がいた。Aさんは絵画サークルを運営し、サークルでの活動をFacebookに掲載していた。団塊の世代には大学紛争経験者が多く、筆者が知る限りでも、Aさんは「やんちゃな世代」である。Facebookで全員の集合写真や制作した絵画を掲載するのはいいのだが、自分の感性を信じて切っているので、筆者が注意を言っても聞いてくれない。

 ある時、Aさんは筆者を含む親戚の前でサークル仲間のBさんと井戸端会議を始めた。以下はその内容である。


Aさん 本当にくだらないことでクレームをするのは困るのよ。回りがクレーマーと決めつけかねないからねえ。

Bさん でもねえ、あの集合写真じゃ、私やCさんは映りが悪いから別の写真にしてほしいと言ってるだけなのよ。あなた(Aさん)だって、もしインターネットに掲載された自分の写真がひどければクレームするでしょう。

Aさん でもね。自分で撮った写真だもの。それがヌード写真だったかというのなら分かるけど、単なるスナップ写真の1つじゃない。私の自由でしょ!


 「おいおい!」と突っ込み所が満載だが、筆者がその口論に参戦するわけにもいかない(勝てない)ので、そのまま聞き耳を立てていた。


Bさん それと絵画の作品を掲載するのも困るわ。このサークルで初心者は私とDさんの2人だけなのよ。だから作品を掲載するのも恥ずかしいから止めてちょうだい。それに作品とともに名前やその他の個人情報を勝手に掲載されるのは、もっと嫌なのよ。

Aさん でもね。これはサークル活動を広く知ってもらうために作品を載せているのよ。私は責任者だし、きちんと提示しなくちゃいけないの。何が個人情報よ! (戦後間もない)昔は個人情報なんて全く無かったじゃない。 ひ弱な精神だから、そんな事を言うのね!


 ここまでこじれると、もはやどう話せばいいかものかと思案してしまう。仕方なく一つひとつ噛み砕きながら、次の3つを二人に“やんわり”とお伝えした。

  1. 集合写真でも写っている全員の了解が必要なこと。訴訟されれば、Aさんが負けること
  2. たとえサークル活動の一環で作成したものでも、個人が作成したものの掲載は個人の承認が必要
  3. 氏名や個人情報を作品と同時にアップするのは絶対にダメ

SNSに勤しむ若い世代

 筆者の隣にいる甥っ子や姪っ子の若者たちは、LINEやFacebook、Twitterなどを駆使して、一年に何回しか会えない同世代との「会話+SNS」に勤しんでいた。

 ふと見ると、EくんはTwitterで「氏ね(死ね)」を連発していた。筆者は「過激な発言は慎む様に」と話したが、Eくんは無視した。そこで筆者が持参したPCで、Eくんの発言をトレースして見せた。


筆者 悪いが君の発言は品性がない。おしゃべりのつもりでSNSを使うのは極めて危険だ。先輩や友人から忠告されなかったのかな? この発言はネット上でずっと残ってしまうよ。就活に差し障りが出て、泣くに泣けない状況になった人も知っている。後悔先に立たず、だからね。

Eくん えっ、叔父さん(筆者)! 僕の内容なんでPCにあるの? 友達でも何でもないのに……。

筆者 無知は怖いんだよ。いまでは検索画面で時間やTwitterやFacebookを指定すれば、リアルな内容を拾える。しかも、ログインをしなくても、その発言者の前後の発言やプロフィールまでも簡単に見られることを知らないだろう。

 匿名が前提のTwitterだって、Facebookと両方利用していれば、簡単にTwitterの発言を個人と紐づけることもできる。匿名なんて意味ないよ。

 君の「ぶっ殺す」という会話のつもりのデジタル情報は、消えない情報として残るよ。これは会話じゃない。ネットに痕跡が残る情報であるという覚悟があるか? という事だ。だから、冗談半分でも脅迫や実在する人・建物に対して「コロス」「爆破」「抹殺」などの言葉は絶対に使ってはいけない。今ではそういう単語だけを監視して、発見すれば警察に連絡して大事にしてしまう愉快犯も多いんだ。


 ここまで話して、Eくんは筆者に極めて基本的な質問をした。その後、スマホ自体をしまい込んでしまった。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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