auショップの販売戦略を支えるモバイルBI 導入の中心となったのは営業部門だった(2/3 ページ)

» 2015年04月21日 15時00分 公開
[ITmedia]

営業現場で使ってもらうためには「見た目」は最重要

 このような課題を解決するために、Sales Navigatorの構築では「業務効率化と営業スキルの標準化」「リアルタイム経営」「情報漏えいリスクの低減」をゴールと定めた。想定した利用ユーザー数は、開発初期からKDDIの約60ある支店の営業スタッフと、全国に数千店舗あるauショップのスタッフ合わせて1万人。彼らがストレスを感じることなく使えるモバイルBIシステムの構築は2013年から始まった。

 まず、着手したのは営業帳票の統一だ。調べてみると支店ごとに異なる独自の帳票を使用していた。フォーマットが異なれば「伝えるべきメッセージ」もバラバラになる。

 ここで気をつけたポイントは大きく2つ。1つは、標準化する帳票は「高い営業レベル」に合わせていくこと。一般的に帳票を統一するとなると誰でも使えるレベルに合わせてしまうことが多い。しかし、これではすでに提案力のある営業活動を行っているスタッフの効率を下げてしまう。

 もう1つは「見栄え」だ。ダッシュボードは単なる数字の羅列ではなくグラフィカルであることを最重要視したのは実に営業的な発想だろう。数値の比較がしやすい棒グラフ、目標到達への進捗が分かりやすい自動車のメーターのようなグラフ、同一地域内の他店舗との優位点がパッと分かるレーダーチャートなど、現場スタッフの使い勝手にはこだわり抜いたという。

 Sales Navigator導入後、営業の業務内容が大きく様変わりした。数字は事前に共有されている。彼らの仕事はauショップがある地域の特性に合わせた販売戦略を一緒に立案することに変わった。

現場からかい離しないシステムを構築するために

 どんなに良いシステムを導入しても現場で使ってもらえなければ意味はない。また、モバイルBIシステムの構築はKDDIにとっても決して安い買い物ではない。そこで開発中のシステムが現場とかい離しないように対話を繰り返し、ニーズをすぐに反映していった。

 もともとコンシューマサポート企画部はコンシューマ営業本部内の1部門ゆえに、現場がほしいと思う帳票を想像することはたやすい。だが、本当にそれが現場で役に立つものかどうかは実際に検証してみないと分からない。特に変化が激しい携帯電話市場では、システムが完成したころには「時代遅れ」となる可能性もある。

 まずは、2013年5月から1カ月程度、KDDI側の営業スタッフ数十人を対象としたトライアルを実施して、そこで得られた現場の声を基に本格的に開発を始めた。2013年12月からは規模を数百人に増やし、約3カ月間にわたって基本機能を検証。2014年3月からは全国の支社をつないで約6カ月間の検証を行った。

 利用ユーザーが増えれば、当然のように新システムへの移行に腰が重いユーザーもいる。全国展開当初の利用率は約20%前後だったという。また、現場の声なら何でもかんでも聞き入れればよいわけでもない。現場と真摯な会話を繰り返し、システムへの誤解があれば業務プロセスを変えることのメリットを説いて回った。

 そして2014年9月、全国のKDDI支社で使っているものと同じシステムを数千を超える販売代理店にも開放した。今ではKDDI側、代理店側ともにユーザーの利用率は80%を超えている。その後、1時間ごとに当日実績をリポートするようにしたところ、KDDIの営業担当者が休日にも数値の参照をするようになったという想定外の効果も得られている。

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